理学部・理学系研究科の卒業生、教員からのメッセージ
※所属、肩書は掲載時のものです
武井 康子
東京大学地震研究所 准教授
- 東京大学理学部地球物理学科 平成元年卒
- 東京大学理学系研究科地球物理学専攻 平成7年卒
- 学術振興会特別研究員PD(H7〜)
- 東京大学地震研究所助手(H12〜)
- 東京大学地震研究所助教授(H16〜)
- 東京大学地震研究所准教授
- 第12回井上研究奨励賞(H7)
- 第1回日本学術振興会賞(H17)
学部で不完全燃焼だったこともあって大学院に進学しましたが、研究というものが分からず悶々としました。転機となったのは実験です。なかなか一歩を踏み出さない私に、指導教官は「だまされたと思って実験をやってごらん」と言い、岩石の代わりに有機物を用いて部分溶融実験をやってみようということになりました。たくさんの試薬を買って部分溶融させてみましたが,一体どれが岩石の代わりとしてふさわしいのか、その選定のための基準が分からず、途方に暮れました。そこで、簡単な装置を自作して一定速度で針を差し込んでみたところ、弱い力で簡単に差し込めるものと、強い力が必要なものがあることに気づきました。なぜそんな違いが出るのかを考えることによって、部分溶融状態における固体粒子同士の結合具合い、その違いを生じている要因、部分溶融岩石における粒子の結合具合い、など、たくさんの問題意識が生まれて部分溶融状態への理解が進みました。何の勝算もなく藁にもすがる気持ちで針を差し込んでみた時の心細い気持ちを今でも良く覚えていて、なにかと臆病だった私にとって転機といえるのはこれだと思います。実験を始めてからは、分からないことが次々に起こるので、悶々とする暇もなくあっという間に時間が過ぎてしまったという感じです。もし悶々としている方がいましたら、とりあえずだまされたと思って何かやってみたら良いのではないかと思います。