理学系研究科男女共同参画基本計画
平成20年3月21日教授会承認
理学系研究科は,理学系研究科・理学部憲章および東京大学男女共同参画基本計画の精神に則り,理学の教育・研究における理想的な環境を実現すべく,この基本計画を定める。
(1) 基本理念
理学系研究科は,豊かで平和な人類の未来社会を切り拓く先端的な理学の教育・研究を推進するため,知の創造と継承,人材育成,自律した運営と体制整備,差別と偏見の排除,社会貢献を行うことを宣言した。特に,性別,国籍,民族,宗教などによる差別・偏見を排除し,普遍的で自由な精神をもってこれに臨む決意である。
1877年創設の東京大学で女性の入学が認められたのは1946年以降であり,これまでに輩出した卒業生に占める女性の割合はなお僅少であるだけでなく,教員に占める女性の割合も低位にとどまっている。この状況は理学系研究科でも同様である。理学系研究科が目標とする教育・研究の推進と発展,および世界的なリーダーとなる人材の育成には,個人が性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮することのできる社会の実現が必要不可欠である。
理学系研究科は, 理学の教育・研究における理想的な男女共同参画の実現のために主体的に活動を行うことを決意し, 全学との連携を行うと共に,独自の計画を実行する。
(2) 基本方針
1. 均等な機会の保障
理学系研究科を構成する教員,職員,学生,研究員のそれぞれが,個人としての尊厳を重んぜられ, 性別による差別的取扱いを受けることなく,その能力を十分に発揮できるよう,均等な機会を保障する。 機会均等の実現によって,教育・研究組織としての使命を果たす。
2. 男女共同参画を阻害する要因の除去
理学系研究科の教育・研究体制,就業体制,制度,環境,慣行について, 男女共同参画を阻害する要因の所在を絶えず見直し,そうした要因が発見された場合にはその除去に取り組む。
3. 教育・研究および就業に係る決定への男女共同参画
理学系研究科の教育・研究および就業に係る決定への男女共同参画を推進する。 このため,実質的な男女の機会均等を達成するうえで必要な範囲内で, 男女のいずれか一方に対して積極的に機会を提供する改善措置に取り組む。
4. 理学の教育・研究を推進する男女共同参画
理学の教育・研究を最大限に推進するために,男女共同参画の理念に基づいた体制を整備する。
(3) 基本方策
1) 教育における男女共同参画
- 理学系学生が性別によって不利益を蒙らないような環境を整え, 男女共同参画を推進するための理学系構成員に対する研修を行う。 具体的には,理学系構成員,理学部学生への意識調査を実施し,現状の問題点を明らかにする。 また,パネルディスカッションや懇談会を通して意見交換を行い,男女共同参画の啓発に努める。
- 理学系への女性志望者を増やすための取り組みとアドミッション・ポリシーとして, 各対象層(中学生,高校生,大学生)に合わせた理学の情報発信をする機会をつくり, 女性比率を引き上げる努力を積極的に行う。また,その保護者に対する情報発信に努める。
- 出産・育児・介護に関わる期間を,学生の在学期間に反映させるとともに, 奨学金授与期間の柔軟な対応を関係機関に働きかける。
- 理学系の女性教員や卒業生の活躍を社会に広めることを通して,男女共同参画の重要性を発信する。
- 理学教育における男女共同参画の問題点や施策を絶えず検討する。
2) 研究における男女共同参画
- 女性研究者を増やすため,理学系構成員が現状認識と将来計画についての共通意識を持つことができるように努める。 具体的には,本問題に関する理学系構成員への意識調査を実施するとともに, パネルディスカッションや懇談会を通して意見交換を行い,男女共同参画の啓発に努める。
- 常勤職の研究者に対する出産・育児・介護等の支援制度の整備を進める。 介護や子育てなどの負担,健康上の問題等,研究・教育の時間的制約が発生した際に, それを補助するための非常勤講師・非常勤研究員雇用制度の確立をめざす。
- 学位取得後の常勤職を持たない優秀な女性研究者を支援するためのフェローシップの創設をめざす。
- 出産・育児・介護等を終えて研究活動を再開した常勤職を持たない研究者を支援するための研究員制度を確立する。
- 理学研究における男女共同参画の問題点や施策を絶えず検討する。
3) 雇用における男女共同参画
- 女性教員を増やすための取り組みを行う。教員の女性比率の倍増をできるだけ早期に実現する。
- 教員の人事選考における研究実績の評価については,出産・育児・介護による制約を配慮する。
- 職員の男女共同参画を推進するために,雇用制度を含む職場環境の改善をはかる。
- 女性のキャリアパス形成に関する大学院生へのガイダンスや支援を行う。
4) 教育・研究・雇用環境の改善
- セクシュアル・ハラスメントの防止と問題への対処を行う。 具体的には,ハラスメント防止のための理学系構成員に対する講習会を実施する。 また,全学のハラスメント相談室の支援をうけて,発生した問題の適切な措置を講ずる。
- 理学系構成員の教育・研究・雇用環境の改善に関する提案制度を確立する。
- トイレ,更衣室,休憩室,育児室などの設備施設等の改善整備と, 夜間照明の整備,設備のバリアフリー化等を含む教育・研究・雇用環境の安全確保に努める。
- 理学系研究科における教育・研究・雇用環境の問題点や施策を絶えず検討する。
5) 推進体制
- 男女共同参画を推進するための担当組織として,男女共同参画委員会を研究科長のもとに設ける。 委員会で具体的な施策を検討し,教授会での審議を経て,実施する。 また男女共同参画室を設置し,日常の活動を支援する。
- 男女共同参画の組織および活動の評価を定期的に行う。 具体的には,年次開催される理学系研究科諮問会にて男女共同参画活動の外部評価を受ける。 また,中期計画の自己評価の一環として本基本計画の進行管理を位置づける。 それらの評価をもとに,必要に応じて本基本計画を見直し,実行する。