理学部・理学系研究科の卒業生、教員からのメッセージ
※所属、肩書は掲載時のものです
村尾 美緒
東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 准教授
1968年生まれ。お茶の水女子大学理学部物理学科を卒業後、1996年にお茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間環境学専攻博士後期課程修了、博士(理学)を取得。PDとして米国ハーバード大学、英国インペリアルカレッジ、理化学研究所に所属。2001年より東京大学大学院理学系研究科物理学専攻助教授。2007年より准教授。専門は量子情報の理論的研究。
幼い頃頃から「なぜなぜっ子」で、色々なことに疑問を持って自分が納得いくまでまわりの大人を問いつめるため、近所迷惑な子供だった。中学の頃テレビで見たスタートレックのスポック博士の論理第一主義に憧れた。高校では何となく薬剤師を目指そうと思ったが、薬学部のパンフレットで実験動物を扱っている写真を見て、動物が苦手であることを思い出して断念。高校の物理は、ほとんど何も覚えずに論理的類推のみで解けることに感動して、大学は物理学科に進むが、大学に入学後、力学や電磁気学では微分方程式の解き方を覚えないと問題が解けないことに落胆して、物理をやめて経済学に転向しようかと真剣に考えた。その矢先、量子力学に出会う。一見、常識に反するような現象も量子力学を仮定すると完全に論理的に理解できることで、物理の魅力にとりつかれた。修士を出たら就職して量子効果デバイスを研究したいと考えて、そのまま大学院に進んだが、量子効果デバイスの研究ができる会社への就職に失敗。しょうがないので覚悟を決め博士課程に進学した。留学を試みるが留学生試験に落ちる。そこで、海外でPDをしたいと、海外のサマースクールや国際会議などに積極的に参加し、研究も頑張った。博士課程1年の時に参加したドイツで開催されたサマースクールでは、博士号取得後に結婚することになる夫に出会うこともできた。しかし、最初のPDとして行ったハーバード大学では、周りが皆天才に見えて落ちこむ。だが、愚痴を聞いてくれた同僚の一言で持ちなおす。次のPDで行ったインペリアルカレッジも思うように研究が進まず再び落ち込む。また愚痴を聞いてくれた同僚の一言によって、量子力学を利用してまったく新しいタイプの情報処理を行うという、量子情報という物理学の中でも新しい分野の研究に出会う。一見常識に反するような量子力学の性質を逆手に取って情報処理に役立てる、という量子情報の世界にワクワクし、その後ずっと量子情報の理論的研究にたずさわっている。1999年に日本に帰国して、理化学研究所を経て2001年に東京大学に着任。ほぼ同時に子供が生まれ、家族をはじめまわりの皆に支えられながら、かなり試行錯誤しつつ子育てと仕事の両立をなんとか頑張ってきた。2006年から東京大学男女共同参画室員として男女共同参画を支援し、学内保育園の設置に携わった。2010年には男女共同参画室長を務め、女子の進学促進、女子学生比率向上への提言を濱田総長に提出した。
理学部在学女子学生へのメッセージ
女性だから、というような固定概念は、知らないうちに社会のあちこちに存在しているので注意が必要です。固定概念にとらわれない自由な発想力を持つためには、多様な背景を持つ人々とのコミュニケーションが大切だと思います。その上で、自分の頭で考え自分で判断する。また、自分ならではという特色を見つけて、その特色を生かして、他に変わる人のいない唯一の人という意味でユニークな人になることを目指してほしいです。そして、それぞれユニークな人同士が互いに協力する相乗効果によって、人類の英知の地平線をさらに遠くに進めたり、人類のより良い未来のために貢献していただければ、と思います。