理学部・理学系研究科の卒業生、教員からのメッセージ
※所属、肩書は掲載時のものです
小金渕 佳江(KOGANEBUCHI Kae)

私はこれまで「長期的な大きな目標」というよりは「短期的な小さな目標」に少しずつ取り組んで、ここまでやってきました。その結果、学部、修士、博士で全て異なる大学および大学院に通い、民間企業で営業やマーケティングも経験しました。いったい私の人生はどうなるのかと思いながら進路を選択してきましたが、今となっては全てのことが私の現在の研究活動を支えていると強く感じます。
私の紆余曲折をここに記してみます。10代の頃はアニメーション制作から研究まで、いろいろなことに興味がありました。高校生の時に生物学、特に進化学がおもしろそうだなと思いながらも、就職のことが気になって産業応用ができることも学びたいと思い、生物の基礎から応用まで広く学べる大学を探して進学しました。その後は、木村資生博士の著書「生物進化を考える」や人類学の講義に感銘を受けて、修士課程で現在も専門としているゲノム人類学の研究をスタートするに至りました。
学部生の頃からずっと、博士課程まで進んで研究職に就きたい気持ちがあったのですが、自分の能力や金銭面の不安が拭えず、また民間企業で働いてみたいという気持ちもあったため、修士課程修了後は3年ほどIT企業で法人営業やマーケティングプランナーとして働きました。
民間企業で研究から離れた仕事をしてみて「自分のやりたいことは研究に関する仕事で、専門的な仕事に就くには博士号を取得する必要があるな」と徐々に感じるようになり、一念発起して博士課程に進学しました。博士課程での研究や論文出版を通して無事博士号を取得しましたが、その最中に自分の能力や金銭面での不安がゼロになったことはなく、もし上手くいかなくても、どこかの企業で働くこともできると心の中で思って、自分の可能性を狭めないように努めていました。博士号取得後は、海外で研究員の仕事を探すことも考えましたが踏ん切りが付かず、国内で職を見つけて琉球大学へ。そして、現在の所属である東京大学へと異動してきました。
これまでに納得のいく選択も納得のいかない選択も両方ありましたが、それが積み重なって、現在では多くの共同研究者の協力を得られることができ、研究活動が行えていると強く感じます。これからは、海外での研究経験や国内外の研究者との共同研究を増やしたいなと思っているところで、少しずつその経験を積み重ねているところです。
今の自分の姿を10代の頃に自分に伝えたら「信じられない!」というだろうと感じます。少しずつ目の前のことに取り組んでいたら、思いもかけず遠くまでやってきてしまいました。皆さんも是非選択を積み重ね、想像できないくらいまで遠いところまで進んでみてください。
2024.10.31掲載