DATE2025.03.11 #Press Releases
タンパク質合成を停止させる新規ペプチド配列を発見
発表概要
生命を形作るタンパク質は、DNAにコードされた遺伝子配列をもとに細胞内装置リボソームによって合成され、この過程は「翻訳」と呼ばれます。リボソームはどんなタンパク質でも合成可能、と思われがちですが、実際には合成しやすい配列と、合成が困難な「難翻訳配列」が存在することが明らかになってきました。これまでにさまざまなアミノ酸配列が難翻訳であることが判明し、かつその一部は遺伝子発現制御に利用され得ることも報告されています。しかしどれだけのアミノ酸配列が難翻訳なのか、そしてなぜ難翻訳となるのかの原理は完全には理解されていない状況です。
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理)の茶谷悠平准教授、東京科学大学生命理工学院 生命理工学系の幸保明直大学院生(博士後期課程)、丹羽達也助教、田口英樹教授、東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻の安藤佑真大学院生(修士課程)、伊藤弓弦准教授、濡木理教授らのグループは大腸菌をモデル生物として、未同定の難翻訳配列を探索するための新技術を開発しました。この技術を用いた大規模解析により、大腸菌遺伝子から二つの新たな難翻訳配列 pepNLとnanCLを同定しました。さらにクライオ電子顕微鏡によりPepNLによって合成が停止したリボソームの構造を解析したところ、PepNLペプチドがリボソームトンネル内で異常な折れ曲がり(ヘアピン)を形成し、翻訳を停止させるメカニズムを解明しました。本研究は2025年3月8日、英国学術雑誌「Nature Communications」オンライン版に掲載されました。
図:リボソームトンネル内でペアピン構造を形成する大腸菌PepNL新生ペプチド
(クライオ電子顕微鏡構造解析)
発表雑誌
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雑誌名 Nature Communications論文タイトル A mini-hairpin shaped nascent peptide blocks translation termination by a distinct mechanism