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理学部ニュース

DNA origami入門」

萩谷 昌己(情報科学科 教授)


川又生吹,鈴木勇輝,村田智著
DNA origami入門」
オーム社(2021年)
ISBN 978-4-274-22713-4

DNA computingは,DNAを中心に分子反応によって情報処理を実現する,また逆に情報処理技術を活用して分子システムを実装することを目指す研究分野である。その中から,DNAによってナノ構造や分子ロボットを実装する技術分野であるDNAナノテクノロジーが勃興した。とりわけ,この本で紹介されているDNA origamiはDNAナノテクノロジーにおける金字塔となっている。

origamiという言葉が用いられているが,この技術では,紙ではなくDNA鎖を折りたたむことによって3次元のナノ構造を自在に実装する。DNA origamiの発想や要素技術は極めて「計算機科学的」なのだが,実際にこの技術を発明したカリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)のロズムンド(Paul W. K. Rothemund)教授はDNA computing分野の計算機科学者であり,この本の著者である東北大学の川又生吹助教も,本学理学部情報科学科を卒業し,筆者の研究室で学位を取得した計算機科学者である。学位取得後もDNA computing分野で活躍している。

この本では,ソフトウェアや実験手法も含めてDNA分子によるナノ構造の具体的な作成方法が詳説されているだけでなく,高分子化学や熱力学の基礎に関してもよく解説されている。

DNA computingは,分子反応に限らず各種の自然現象と情報処理の関係を探求する「自然計算」というより大きな分野の一部と位置付けることができる。筆者は今年度まで理学部で「自然計算」という講義を担当してきたが,残念ながら3月末の筆者の退職にともなってこの講義も終了する。この講義の中でDNA origamiも紹介していたが,今後はぜひこの本を参照して欲しい。

理学部ニュース2022年3月号掲載

 

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