DATE2024.09.20 #Press Releases
植物の「内と外」を最初に作る仕組みを発見
〜細胞はかたちを少し変えることで分裂の方向を決めている〜
発表概要
植物の基本的な構造は、茎や根のような円筒型です。内側の維管束と、外側の表皮とを繋ぐ平面的な内外軸をもつことが、植物のかたち作りにとって重要です。しかし、内外軸がいつ・どのように作られ始めるのかは長年の謎でした。
東北大学の植田美那子教授、広島大学の藤本仰一教授、熊本大学の檜垣匠教授、東京大学の東山哲也教授らの共同研究グループは、モデル植物のシロイヌナズナにおいて、胚の最外層で働くHD-ZIP IV転写因子群を壊すと、内外軸がうまく作れなくなることを見出しました。また、受精卵から胚が次第に作られていく様子を、ライブイメージングによって詳細に追跡した結果、受精卵の第一分裂の直後から、この転写因子群の働きによって細胞が少し横に伸び、核が細胞の底面に位置することや、その後に細胞が左右に分裂し、内外分裂に至ることを発見しました。さらに、細胞のかたちと核の位置によって、数学的に最も安定な場所に分裂面が作られることを突き止めました。
この研究によって、細胞のかたちや核の位置という幾何学的な情報をわずかに変化させるだけで分裂方向が決まるという、精緻な戦略が明らかになりました。この発見により、植物の体軸形成への理解が進むと期待されます。
本研究成果はCurrent Biology誌に2024年9月19日付で掲載されました。
図:(A)植物の体軸の模式図。(B)表皮で働く遺伝子(緑)と胚全体で働く遺伝子(ピンク)の発現を蛍光標識したシロイヌナズナの胚。野生型と、HD-ZIP IV転写因子群が壊れたhdg11/12 pdf2三重変異体を示す。(C)細胞膜を蛍光標識した野生型胚のライブイメージング像。時間は時:分を示す。(D)コンピュータシミュレーションによる分裂方向の推定。左右分裂する直前の野生型胚の細胞形状と核の位置をもとに、「核の中心を通り、かつ面積が最小になる分裂面」を計算すると、実際の分裂面と同様に左右分裂することが分かる。スケールバーは10マイクロメートル(µm)を表す。
本研究には、生物化学専攻の東山 哲也教授が参加しています。
関連リンク:東北大学、東北大学大学院生命化学研究科、広島大学、熊本大学
発表雑誌
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雑誌名 Current Biology論文タイトル