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理学部ニュース

  研究科長・学部長あいさつ

 

 好奇心と気づきの大切さ

 研究科長・理学部長
 大越 慎一
 (化学専攻 教授)

略歴

2006年より東京大学大学院理学系研究科化学専攻教授。仏パリ第六大学客員教授,仏ボルドー大学客員教授,英ダラム大学名誉教授,英オックスフォード大学客員フェローなどを歴任し,現在,科学技術振興機構SPRING GX事業統括,フランスCNRS国際共同研究所ディレクター,英マンチェスター大学客員教授を兼任。1989年上智大学卒。1995年東北大学大学院博士後期課程修了。博士(理学)。2023年より現職

理学系研究科・理学部の研究領域は,素粒子,原子,分子というミクロなサイズから,細胞,生物とマクロなサイズを経て,地球の内部から極地,そして太陽系,銀河,宇宙の果てまでを対象としています。また,ビッグバンから始まる宇宙創成,過去,現代,未来に至る長い時間軸を対象としています。人は皆,自然界における未解明な謎に心惹かれ,それを知りたいと望みます。その答えを好奇心を持って追い続けているのが理学系研究科・理学部です。何事にも左右されない人の直感は,物事の本質をつくことができると信じています。理学系研究科・理学部の教員と学生達の深い知識・鋭い洞察力が,その直感と相まって,新たなる発見に繋がると考えています。また,その発見やそこで見出された科学技術は,時として人々の暮らしにも役立つこともあるかもしれません。理学的な研究は,創薬,マテリアル,AI,Beyond 5G,そして量子技術といった先端分野の礎に繋がる可能性も秘めており,実際に多くの特許や知的財産を生みだしてきております。例えば,1901年に東京帝国大学理科大学化学科教授に就任した池田菊苗教授(1864–1936)は物理化学の基礎的な研究を行った一方で,1907年に,現在「味の素」などの商品名で一般家庭に広く普及しているうま味調味料の主成分であるL−グルタミン酸ナトリウムを見出しました。池田教授は日本の十大発明家の一人として位置づけられています。なお,池田教授が退官時に使用していた教授室は現在も使用されております。また,CO2濃度の上昇に伴う気候変動は人類の未来を脅かしています。そのような地球規模の危機に際しても,理学的な研究は力を発揮すると思います。事実,CO2による気候変動を予想したのは,2021年にノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎先生(1958年博士了)です。我々人類がより良く地球を管理するためには,地球規模の多くの課題を解決する必要があります。そのためには,理学が必須であると考えています。本年度は東京大学アタカマ天文台(TAO)計画のTAO望遠鏡がいよいよ本格的に稼働を始めます。天文学において新たな発見がもたらされることでしょう。

森羅万象の理を解き明かすとともに,地球規模の課題を解決するのは,今まさしく勉学・研究に励んでいる大学生・大学院生です。まずは個々の研究分野の高い専門性を身につけることが重要です。その上で,その高い専門性を持った学生が他の専門の学生と交流することで「気づき」を得ることが大切だと思っています。

研究科長として,理学系研究科・理学部の研究者の高い専門性を,より高く引き上げるための安定的な環境を整備するとともに,「気づき」の場を提供するために国際交流,異分野間交流,産学間交流,男女共同参画などを通じて,さまざまな感性の交流が実現する環境の整備を強力に推進していきたいと考えています。

2023年度
理学系研究科執行体制
研究科長・評議員 大越 慎一(化学)
副研究科長・評議員 常行 真司(物理)
副研究科長 榎本 和生(生学)
佐藤  薫(地惑)
研究科長補佐 松尾  泰(物理)
井出  哲(地惑)
大橋  順(生科)
小澤 岳昌(化学)
 
事務部長 渡邉 慎二

理学部ニュース2023年5月号掲載