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理学部ニュース

  研究科長・学部長あいさつ

研究科長・学部長退任にあたり
コロナ禍の3年間を振り返って

研究科長・理学部長

星野真弘

(地球惑星科学専攻 教授)

研究科長・学部長に就任したのは2020年4月ですが,この3年間の任期は,コロナ禍で始まってコロナ禍で終わろうとしています(今度こそ終息することを切に祈っています)。思い返すと,就任した4月には,政府の新型コロナウィルス感染症の緊急事態宣言に続いて,東京大学の行動制限レベルが引き上げられ,すべての講義や会議がオンラインとなり,異様なほどに静まり返った本郷キャンパスで研究科長の仕事がスタートしました。私の研究テーマは,宇宙でのプラズマ加熱や高エネルギー粒子加速の解明で,その対象となる現象の一つが太陽コロナです。約6千度の温度で輝く太陽表面(光球)の外側に数百万度のコロナがあり,なぜコロナの温度が光球よりも高温なのかは宇宙における未解決問題の一つになっています。就任早々に,どうして同じ名前のコロナに悩まされるのかと,研究科長室でため息をついたのを思い出します。異例の3年間でしたが,何とか乗切れたのも,執行部や企画室の先生方や事務方,そして構成員の皆様のご協力やご支援があったからだと心より感謝しております。

理学系研究科は,東京大学の数多くの部局の中でも,活発な研究活動はもとより,先進的な教育や組織改革の取組みを積極的に行ってきた部局だと言ってよいかと思いますが,私としては,この流れを止めることなく発展させていけるようにと心がけて参りました。たとえば国際化については,これまで理学系では海外学生の受入れや国内学生の海外派遣プログラム,外国人客員教員部門など国際化教育環境を充実化させて来ていますが,今回,新たなグローバルスタンダード理学教育の確立を目指し,世界で活躍できる若手人材育成を強化するために,外国人教員の複数名同時採用に向けて動き出すことが出来ました。これは世界トップクラスのグローバル教育環境の実現に向けた小さな一歩ですが,将来更に教員の国際化が進み,真にグローバルキャンパスが実現することを期待しております。また老朽化した理学部2号館および3号館の新棟建設と全学的なライフサイエンス研究の推進についても,生物系の先生方のご尽力によって,東京大学全体の将来構想にしっかりと位置付けていただけることになりました。このような次世代につながる取組みのお手伝いをさせていただけたことも大変うれしく思っております。

さて,在任中のビックニュースとしては,地球物理学科(現在の地球惑星科学専攻)を卒業された真鍋淑郎先生が2021年の秋にノーベル物理学賞を受賞されました。地球温暖化やそのメカニズムについて改めて関心を持たれた方も多かったと思います。また,2022年2月にはロシアのウクライナ侵攻が勃発しましたが,理学系研究科では,ウクライナ支援として,特に情報科学科や数学科の先生方のご協力を得て,11名の学生・研究者を受け入れることが出来ました。私はウクライナやロシアの研究者とも共同研究をしておりますが,国境がない研究の世界とは異なり,報道されるニュース等から,グローバルな国際協調の難しさをひしひしと感じた日々でした。コロナ禍で行動制限が厳しかった3年間ですが,思い起こせば色々な出来事が盛沢山だったかと思います。

最後に,在任中は役職柄,理学系研究科はもとより他研究科等の数多くの方々とお会して,お話や議論をさせていただき,新しい視点や考え方を学ぶことが出来ました。この経験を活かして,また何かのお役に立てればと思います。理学系研究科・理学部が,これまでの良き伝統を生かして,更に発展していくこと願って止みません。

理学部ニュース2022年3月号掲載