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理学部ニュース

地球の中身

廣瀬 敬(地球惑星科学専攻 教授)


廣瀬 敬 著
「地球の中身」
何があるのか,何が起きているのか

講談社(2022年)

ISBN 978-4065266601

「地球の中心は太陽系の果てよりも遠い」という言葉がある。地表から地球の中心まで6400km。長らく太陽系の一番外側の惑星とされていた冥王星よりもはるかに距離は短い。しかし,地球中心にある内核(固体コア)が見つかったのが1936年,一方冥王星の発見はその6年前のことだった。探査機が冥王星から鮮明な画像を送ってくる時代になっても,地球内部に探査機を送ることはできない。地球深部はまだまだ未知の領域である。

さて,地球内部は高い圧力と温度の世界だ。私たちの研究室では,最も硬い物質であるダイヤモンドとレーザーを使って,地球深部の環境を実験室で作り出している。地球のマントル最下部はこれまで想像すらされていなかった鉱物から成っていること,内核は比較的最近できたものであることなどを私たちは明らかにしてきた。

この本では,そのような高圧実験を通して見えてきたこと,すなわち地球内部にはどのような物質があり,何が起きているのか,が紹介されている。さらには,地球がどのように誕生し,これまで進化してきたのか,が議論されている。最近では火星探査が進み,火星コアがかなり大きいことなどがわかってきた。それを受けて本書では,火星コアが海を失う原因を作ったなど,筆者らの新説が述べられている。この本を読んで,自分たちの足下のことが地球の環境に大きな影響を与えていることもぜひ学んでもらいたい。

(関連講義: 地球システム進化学(教養学部),固体地球科学・地球惑星内部物質科学(理学部))

理学部ニュース2023年3月号掲載

 

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