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理学部ニュース

山口そのみ氏が第13回 (2022年度)日本学術振興会育志賞を受賞

濡木 理
(生物科学専攻 教授)

 

このたび,生物科学専攻の山口そのみさんが第13回日本学術振興会育志賞を受賞されたこと,心よりお祝い申し上げます。


山口そのみ氏

受賞の研究題目は「ショウジョウバエのRNAサイレンシング関連因子の構造機能解析」というものです。RNAサイレンシングとは20塩基ほどの小分子RNAによる遺伝子発現調節機構のことです。酵素Dicer(ダイサー)は小分子RNAの中間体である二本鎖小分子RNAを産生します。この中間体RNAはDicerとパートナータンパク質を介してRNAサイレンシングの中核を担う,Argonaute(アルゴノート)というタンパク質に受け渡されます。二本鎖小分子RNAのうち片方のRNA鎖はArgonauteと複合体を形成し,「ガイド」として相補的な標的RNAを抑制します。RNAサイレンシングは真核生物に保存された遺伝子発現調節機構であり,重要な生命現象として注目を浴びています。しかし,Dicerとパートナータンパク質がどのように二本鎖小分子RNAをArgonauteに受け渡すかは20年もの間明らかになっていませんでした。 

山口さんはショウジョウバエのDicer酵素であるDicer-2とそのパートナータンパク質R2D2,二本鎖小分子RNA複合体との立体構造をクライオ電子顕微鏡を用いて決定しました。生化学的な解析を自ら行うことで,R2D2が二本鎖小分子RNAの二重らせん性の弱い末端を溶媒に露出させ,一方向でArgonauteにローディングすることが明らかになりました。本研究はRNAサイレンシングの分野においてこれまで解かれることのなかった問題を解決するものであり,本領域の研究を大きく前進させました。

この度の受賞は山口さんの大学院博士課程における研究成果が高く評価されたものです。本当におめでとうございます。

 

 

理学部ニュース2023年3月号掲載

 

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