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理学部ニュース

流行よりも自分で面白いと思うところを見つけて飛び込む

山田 鉄兵(化学専攻 教授) 

2003年,東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。三菱化学株式会社,九州大学大学院理学研究院助教,京都大学大学院理学研究科助教。2012年九州大学大学院工学研究院,分子システム科学センター准教授,2014年JSTさきがけ研究員(兼任)を経て2020年より現職。2022年日本学術振興会賞を受賞。


Q. 趣味はなんですか?
A. 将棋 
6歳で親に教わってからずっと趣味として続けています。強くはありませんが,自分にしか指せない手を思いついたとき,自分の力を実感できるときの感動が好きです。藤井聡太五冠の将棋も良くチェックしています。

Q. お気に入りのアイテムは?
A. カウントダウンタイマー
ポモドーロメソッド用にタイマーを使っています。学生への講義でも30分を目処に2分程度の休息を入れています。自分が学生だったときの事を考えると眠そうな学生に怒る気がしないので。

Q. 学生さんにおすすめする本や教科書は?
A. 「入門現代の量子力学量子情報・量子測定を中心として」1
僕は学生時代に量子力学に納得できませんでした。上記の本は非常に面白そうですが,恥ずかしながら未読です。ぜひどなたかに解説してほしいです。

「固体と表面の理論化学」2
物性物理と化学結合論とは,案外言葉が通じないくらい離れがちです。この二つの分野をつなぐ本として,ノーベル賞受賞者のホフマンによるこの本が最も優れていると思います。ただ絶版ですので図書館で探して下さい。

「有機化学美術館へようこそ」3
有機化学美術館というサイトを運営する方が書いた本で,有機化学と産業への深い理解と愛情が伝わる面白い本です。同著者による「炭素文明論」などの他の著書も含め,ネット時代の学生にお勧めです。

「ストレスフリーの仕事術」4
僕は事務仕事が大の苦手です。僕のような人間に役に立った2つのハウツーのうちの一つが本書のGTD法です。理学部っぽい?方におすすめします。もうひとつの役立つ仕事術は「ポモドーロメソッド」です。

Q. 宇宙人はいると思う?
A. います
近年,これだけハビタブルゾーンに惑星が見つかると,生命が地球外に存在するのはもはや当たりまえと感じています。ところで空気が読めないタチで恐縮ですが「宇宙人」はタンパク質やDNAではなくても良いじゃないですか。宇宙の生命の定義はあいまいだと思います。もしシュレディンガーがいうような負のエントロピー消費と,自分のコピーのようなものを増やすこと,の二つを定義とするのであれば,今のタンパク質やDNAの系とは全く異なる「生命」を考えることもできるはずです。たとえば恒星が超新星爆発を起こして新たに恒星を作るのであれば,恒星も 「生命」の一種だと思います(地球の生命体が化学結合エネルギーを利用しているのに対し,これらは重力と核力を利用しているという違いに過ぎません)。同様に,太陽の中の乱流の渦にも「生命」と定義できるものがあるはずですし,海面の波も、波が別の波を創り出す因果関係がある(ありそう)なので,風の力を利用した「生命」の一種ではないかと思います。このように地球上にだってエネルギーや材料の種類を変えた「生命」を考えることができると思います。無機化学の研究者としては,そのような自己複製に適した「生命」的な性質を持つ無機材料を考えてみたいです。

ー メッセージ ー

自分でデザインした分子や性質を発表する感動を一緒に味わいましょう。

理学部ウェブマガジン「リガクル」では,詳しいインタビュー記事を紹介しています。

1. 堀田 昌寛 KS物理専門書、2. R. ホフマン(Roald Hoffmann)(著), 小林 宏(翻訳), 榎 敏明(翻訳), 海津 洋行(翻訳) 丸善
3. 佐藤 健太郎 技術評論社、4. デビッド アレン(David Allen)(著), 田口 元(翻訳) 二見書房

理学部ニュース2022年11月号

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