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理学部ニュース

「生物をシステムとして理解する」
-細胞とラジオは同じ !?-

豊島 有(生物科学専攻 准教授)


久保田 浩行 著・巌佐 庸 コーディネーター
「生物をシステムとして理解する ―細胞とラジオは同じ !?―」
共立出版(2018 年)
ISBN 978-4-320009271

システム生物学は,生体を構成する個々の細胞や分子だけに着目するのではなく,それらがつながったネットワークやシステムのもつ性質によって,生命現象の動作原理を明らかにしようとする、生物学の新しい一分野である。

本書の著者である九州大学の久保田浩行教授は,本学理学部生物情報科学科の黒田真也研究室でシステム生物学の研究を始めた。本書では,細胞内シグナル伝達系やインスリンによる代謝制御に関する著者らの研究内容を,その進展とともに平易に説明することで,システム生物学による 「生命現象の理解のしかた」に触れることができるよう工夫されている。また,著者がシステム生物学に惹かれたきっかけや,どのように研究を進めるのかという方法論も説明されており,これから生物学の研究を目指す初学者にとって大変参考になる。

システム生物学では,生物学を中心としつつも,情報科学や数学,工学など,さまざまな分野の力を総動員することになる。本書の事例を通じて,これらの分野の考え方や技術がどのようにつながり,研究に役立つかがわかると,大学の教養課程を含む多様な学びへのモチベーションにも繋がるだろう。

本学理学部では,生物情報科学科の黒田真也研究室,角田達彦研究室,豊島有研究室などで関連した研究が展開されている。また関連する講義としては,前期教養課程の総合科目「生物情報科学」や本学理学部生物情報科学科の「システム生物学」などがある。

理学部ニュース2022年9月号掲載

 

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