2021 年度理学部諮問会が開催されました
山本 智(物理学専攻 教授)
諮問会当日の様子
2022年3月3日(木)に理学部諮問会が開催されました。諮問会は,さまざまな分野でご活躍の先生に理学部の現状と課題,また,将来の方向性についてご意見を伺う貴重な機会として,毎年開催しています。
2020年度は新型コロナ感染症の拡大のためオンラインでの開催となりましたが,今年は,対面とオンラインを併用したハイブリッドで行いました。別表にあります委員の先生には,ご多忙の中,全員が参加してくださいました。その中で,内永ゆか子委員,小安重夫委員,川合眞紀委員は理学部に直接お越しいただき,対面での参加となりました。
諮問会は林正彦委員を議長として進行していただきました。会議では,星野真弘研究科長から理学部の現状,研究の卓越性,社会貢献の在り方について,また,大越慎一副研究科長から教育・研究の国際化について,川北篤教務委員長から学部大学院教育について,河野孝太郎男女共同参画室長から男女共同参画の取り組みについて,それぞれ報告しました。これらに対して,委員の先生は,時に説明途中からも質問されるなど,活発な議論と意見交換がなされました
その中で,特に議論があったことの一つは,国際化への取り組みでした。なかでもダブルディグリープログラムが動きだしたことについて強い関心が寄せられました。従来,海外の大学などからのオファーはあったものの,学内での仕組みが整わないためにできなかった現状を打ち破ったことは,他学部,他大学への波及の嚆矢となるものと,高く評価していただきました。また,グローバルサイエンスコース (Global Science Course (GSC)),修士課程国際卓越大学院コース(Global Science Graduate Course (GSGC) )などの取り組みと併せて,外国人学生への経済支援を充実させるべきとのご意見もいただきました。理学部のさらなる国際化に向けて後押しいただいたと受け止め,一層の努力をしていく必要があります。
もう一つは,社会貢献についてです。この間,JSR株式会社やダイキン工業株式会社など企業との連携が本格的に始まっているが,もっと広くプロモーションをすることを考えてはどうかという提言をいただきました。民間が独自に基礎研究を内製するのは得策でないという考えが広がっているとのことで,企業側としても大学と連携する意欲が高まりつつあると感じました。現在は個人的なつながりの発展の中で上記の連携が構築されていますが,それを理学部としてどう支えるか,また,新たな連携をどう組織的に作り上げていくかという,大変重い宿題をいただいたように思います。財源多様化が求められる中で,その方向性の追求は不可欠であり,「もっと積極的に企業に声かけしても良い」というご意見は,非常に勇気づけられるものでした。
また,女性の教員が依然として少ないのも昨年に引き続いて議論になりました。大学でも企業でも女性活躍という掛け声の下で女性の雇用を進めたがっているが,そもそも母数が少ないため,取り合いになっているという指摘がありました。つまり,理系に進む女子学生の数が少ないことが本質的問題ということで,中学・高校生レベルへのアプローチの重要性が改めて認識されました。これをどう進めるかというのは,理学部だけの問題ではなく,東大全体としての問題ではありますが,理学部がどう主体性を発揮して先導していくかが問われたものと受け止めています。
これら以外にも,論文数による業績評価の問題点,大学院生への経済支援の状況などさまざまな点について,予定時間をオーバーして貴重なご意見をいただけたことは,大変よかったと思います。
理学部としては,それらを受け止め,どう運営に反映させていくかが問われていると諮問会当日の様子言えます。
別表:諮問会委員名簿(敬称略)
阿形 清和 自然科学研究機構基礎生物学研究所 所長
内永 ゆか子 NPO法人J-Win 理事長
川合 眞紀 自然科学研究機構分子科学研究所 所長
小安 重夫 国立研究開発法人理化学研究所 理事
花輪 公雄 山形大学 理事・副学長
林 正彦 日本学術振興会ボン研究連絡センター センター長
理学部ニュース2022年5月号掲載