Youyuan Zhang 氏が第12回(2021年度)日本学術振興会育志賞を受賞
山内 薫(化学専攻 教授)
Youyuan Zhang 氏
化学専攻博士課程3年のYouyuan Zhangさんが「強レーザー場において生成した分子イオンの光励起過程の理論」により、第12回(2021年度)日本学術振興会育志賞を受賞しました。
Zhangさんは,近赤外域のフェムト秒レーザー光を空気中に集光したときに単色でコヒーレントな光が発生する「空気レーザー」と呼ばれる現象の解明に理論の立場から決定的な貢献をしました。この現象は,窒素分子イオン(N2+)の電子励起B状態から電子基底X状態への可視および紫外域の発光に伴うものですが,励起に用いるフェムト秒レーザーの波長が近赤外光であり,直接的にはB状態にN2+を励起することができないため,その機構は長いこと謎でした。Zhangさんは,二準位量子系が突然光電場に晒された場合の数値シミュレーションを行い,光子エネルギーが低い場合であっても,下準位の分布が上準位に移動することを見事に説明しました。そして,振動と回転の自由度を導入することによって,空気レーザーのシミュレーターを開発し,空気レーザー発振の時間発展を,理論計算によって再現しました。Zhang さんがN2+の反転分布の生成過程を分子レベルの微視的なモデルを用いて明らかにしたことは国際的に高く評価されています。
この度の受賞は,Zhangさんの大学院博士課程におけるこの独創的な研究成果が認められたものです。Zhangさんの受賞を心よりお祝いします。
理学部ニュース2022年3月号掲載