「宇宙物理学ハンドブック」
高橋 忠幸(カブリ数物連携宇宙研究機構 教授)
高原 文郎・家 正則・小玉 英雄・ 高橋 忠幸編 |
「宇宙物理ハンドブック」 |
朝倉書店(2020年) |
ISBN 978-4-254-13127-7 |
宇宙物理学は物理学の立場で宇宙の理解をはかろうとする分野である。宇宙の進化や構造形成を扱う宇宙論から,中性子星やブラックホールなどの相対論的天体の成り立ちにいたるまで,その対象は極めて広い。原子核物理学に基づく恒星進化論から誕生した宇宙物理学は,現在では重力理論,宇宙線,素粒子・原子核,プラズマ・流体などの物理学の広範な分野と深い関わりを持つようになっている。また,現代では,電波,可視赤外,X線・ガンマ線,宇宙線,そして近年のニュートリノや重力波など,宇宙を理解するために開発された観測装置が,地上,地下そして宇宙空間に展開されている。
本書は宇宙に関心のある研究者や学生の方々が,宇宙物理学の全体像を理解し,その正確な知識を簡潔にえるための助けとなるようにハンドブックとして編纂された。現代の宇宙物理学を表すようなトピックが選ばれ,専門家の手により,最新の研究成果を含めて,コンパクトに解説されている。宇宙物理学の歴史と特徴が最初にまとめられたあと,「天体の物理」,「宇宙論」,「相対論的天体と高エネルギー宇宙物理学」の各項目が解説され,最後の章では宇宙観測のさまざまな手法と,それを支える観測装置が「宇宙の観測」として,まとめられている。学部3年レベルの物理学の基礎知識を前提とし,さらに詳しい知識が必要な場合に,その助けとなるような学術論文や書物も紹介されている。
本書を通じ,宇宙が現在どのように理解されているか, そして宇宙観測の最前線がどのように展開されているかをわかっていただけるのではないかと思う。
理学部ニュース2022年1月号掲載