通じない英語の話(ベテルギウスの話)

梅田 秀之(天文学専攻 准教授)

 

英語が現地の人に通じないということはよくあると思うが,通じない大きな理由の一つは日本にカタカナがあるせいと思うことがある。カタカナは英語を知っている気にさせるので,いざ言おうという場面で,そういえば英語を知らないと気づくことがある。ベテルギウスというのはオリオン座にある有名な星であるが,最近,2等級も暗くなって超新星爆発をするのではないかと騒がれる事件があった。

以前アメリカにいたときに(スマホなど無い時代),この星の話しをしようと思ったことがあったのだが正しい発音を知らなかった。カタカナ的に言っても通じないだろうと予測し英語っぽく抑揚をつけて言ってみても案の定全く通じない。 仕方ないので,オリオン座の四辺形の星の一つでリゲルの対角にあるなどと言ってみても完全に?という顔である。

最終的に分かったのは(絵を描くなどした後),ビートゥルジュースのような感じで発音するようで,ォラィオン座のライジェルの対角の星のように言わないとまったくわからない。

ビートゥルジュースではカブト虫ジュースみたいだな思ったが,それは米国人もそう思っていたようで,そういう題名のホラーコメディが作られたりしていたようだ。ところでォラィオン座ではライオン座みたいだなとも思ったが,これではRとLを間違えているので,そう思うのは私だけだったようだ。RとLの区別がつかないのが,日本人が英語が不得意な最大要因の一つであろう。時々思うのだが,ひらがなはそのままで良いが,カタカナのラ行はLとRに対応して2種類の文字を作るほうが良いのでは。こういう提案がなされていない理由は知らないが,そうするだけで子供の英語力はかなりアップするのではなかろうか。

©国立天文台

さてベテルギウスが暗くなった話だが,2019年末から翌年2月にかけて0.5等星から2等星まで暗くなった。それが進むと有名な冬の大三角の危機ともなりかねない。私も目で暗くなっているのを確認したが,古代の人が日食に不安になった気持ちが少しわかるような気がした。この頃にはまもなく超新星爆発をするのではないかと騒がれもしたが,その後増光に転じ,2020年4月頃にはほぼ元の明るさに戻った。

日食と違いベテルギウスのような恒星が変光する理由は正確に理解されていない。少なくとも将来の大変動を予測することは現在全く不可能である。それはまだ天文学者には,仕事が多く残されているという一例である。標準的な理論では,星の表面変化と超新星爆発は無関係である。しかし近年それに反する観測的な示唆がいくつか見つかってきている。ベテルギウスは今後10万年は爆発しないという研究者もいるが,実際どうなのか。最近大学生院生らと研究を行ったが,星の色,明るさ,表面組成などから考えると,明日爆発する可能性も残されているという結論を得た(論文投稿中)。

もし超新星爆発をおこすなら,その数日前からスーパーカミオカンデにより前兆ニュートリノが観測され得るという共同研究もおこなっており興味を持っている。冬の大三角の一つがなくなってしまうのは残念なことではあるが,爆発すれば天文学に多大なインパクトを与えることは間違いない。

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理学部ニュース2021年9月号掲載



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