西田知訓特任講師が2021年度文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞
久保 健雄(生物科学専攻 教授)
西田知訓(生物科学専攻 特任講師)
生物科学専攻の西田知訓特任講師 (RNA生物学研究室)が2021年(令和3年)度文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞されました。生物科学専攻長として心よりお祝い申し上げます。
西田博士の研究対象はpiRNAと呼ばれる生殖組織特異的に発現する非コードRNAです。piRNAは約30塩基長と非常に小さく,少し前までその生体機能は不明でした。しかし,西田博士をはじめとした国内外の研究者による最近の研究から,piRNAは生殖細胞においてトランスポゾン(動く遺伝子)を発現抑制することで,生殖細胞ゲノムの品質を守るという大きな役割をもつことが判明しました。われわれヒトでも勿論,不可欠です。遺伝子変異などでpiRNAの機能が失われるとトランスポゾンの発現抑制が効かなくなり,ゲノム損傷を引き起こします。これは卵子・精子の形成異常,ひいては不稔に繋がり,子孫を残せなくなります。西田博士はpiRNA生合成の作用機序の分子機構の解明に取り組まれ,複数のpiRNA因子の機能を解明すると共に,piRNA生合成機構モデルを世界に先駆けて提唱されました。また,良質のモノクローナル抗体の作製技術を有しており,自ら作成した抗体を自身の研究のみならず,国内外の研究者に分与することで当該研究領域の発展に貢献しておられます。本研究の成果は不妊治療など医療応用へつながる可能性を秘めており,今後の西田博士の研究発展は広い領域から注目されています。
理学部ニュース2021年5月号掲載