物理学専攻の林 将光准教授が第17回日本学術振興会賞を受賞
長谷川 修司(物理学専攻 教授)
林 将光准教授
物理学専攻の林将光准教授が,「強磁性ナノ構造の磁化ダイナミクスとスピン軌道相互作用が誘起する物性に関する研究」の業績で,第17回(2020年度)日本学術振興会賞を受賞されました。この賞は,学術上特に優れた成果を上げたと認められる45歳未満の若手・中堅研究者に贈られるものです。
コンピュータの中での情報の処理と記憶のために,電子の電荷だけでなく,電子のスピン(磁化の向き)を利用しようとする 「スピントロニクス」の分野が今盛んに研究されていますが,林准教授は,インパクトの高い先駆的な成果を次々と挙げ,当該分野を国際的にリードし続けています。たとえば,強磁性体ナノ細線に電流を流すと,スピン軌道相互作用に起因するトルクが発現し,それによって磁化の向きが反転して磁壁が高速で移動することを見いだすとともに,それを利用して磁気シフトレジスタのメモリ動作を実証しました。また,強磁性層と重金属層の界面に生じるジャロシンスキー・守谷相互作用と呼ばれるスピン間の相互作用の大きさや符号を,重金属層を構成する物質を変えると系統的に制御できることを見いだし,「スピンオービトロニクス」という新分野を開拓しました。さらに,この相互作用の電流変調や高効率な磁化制御を可能にする新しい材料として,BiSb半金属が有望であることを示しました。
林准教授のご受賞を心よりお祝い申し上げますとともに,今後とも益々のご活躍を祈念しております。
理学部ニュース2021年3月号掲載