化学専攻の谷藤 涼助教が第37回井上研究奨励賞を受賞
大栗 博毅(化学専攻 教授)
谷藤 涼助教
化学専攻の谷藤 涼助教が、第37回井上研究奨励賞を受賞しました。この表彰は,過去3年の間に優れた博士論文を提出した若手研究者に与えられます。受賞対象となったのは,谷藤助教が東京農工大学大学院工学研究院応用化学部門において執筆した「DNAアルキル化能を有するテトラヒドロイソキノリンアルカロイド群の化学–酵素ハイブリッド合成」と題する博士論文です。
複雑な多環性骨格を有する抗腫瘍性アルカロイドの化学合成は困難であり,既存の手法では多段階変換が必要でした。谷藤博士は,中間体の単離・精製を最小限にとどめ,五環性骨格をわずか1日で構築できる化学–酵素ハイブリッド合成法を世界に先駆けて実現しました。有機合成した単純な基質から4−5ポットの変換を経て,ジョルナマイシンA,サフラマイシンAの全合成に成功しました。さらに,天然物よりも優れた核酸アルキル化能を発現する中分子を創製しました。天然物群の系統的全合成にとどまらず,非天然型中分子群の創製・ 機能評価を実現し,高次構造生物活性分子群の合成に新展開をもたらした先駆性・独創性が高く評価されました。現在,谷藤助教は,本研究科化学専攻助教として化学合成と酵素合成を融合し,生体機能性中分子群を創製する研究を精力的に展開しています。谷藤博士の受賞を心からお祝いするとともに,今後ますますご活躍されることを期待しております。
理学部ニュース2021年3月号掲載
このほか,化学専攻博士課程を修了された,理化学研究所のYiyang Zhan学振研究員が井上研究奨励賞を受賞されました。
まことにおめでとうございます。