白色矮星をまわる巨大惑星候補の発見

福井 暁彦(地球惑星科学専攻 特任助教)


太陽以外の恒星をまわる惑星を初めて発見した功績により,M. マイヨール(Michel Mayor)とD. ケロー(Didier Queloz)の両氏が2019年のノーベル物理学賞を受賞したことは記憶に新しい。この1995年に発見された木星サイズの系外惑星は, 主星のまわりをたった周期4日で公転する「常識はずれ」の惑星であり,それまで太陽系内の惑星しか知らなかったわれわれの知見を大きく広げた。その後,世界中で繰り広げられた系外惑星ハンティングによって新たな惑星が次々と発見され, 惑星は宇宙に豊富に存在すること,多様な惑星が存在すること,生命に適した温度をもつ惑星が系外に実在することなどが明らかとなった。しかし,これまでに発見された系外惑星のうち,密度や大気成分が観測されたものはまだ数が少なく,大半の 惑星はその組成や成り立ちがよく分かっていない。 また,これまでの惑星探索はおもに太陽と同程度の質量の恒星に対して行われており,われわれから見てより「異質」な星(低/ 高質量星や白色矮星など)に対する探索はまだ十分に進んでいない。

2018年に打ち上げられたテス宇宙望遠鏡は,全天に広く分布する明るい(太陽系近傍の)恒星に対して惑星探索を行うことで,密度や大気組成を調べることが出来る惑星や,多様な恒星をまわる惑星の探索を行っている。テスは,ケプラー探索でも用いられた「トランジット法」と呼ばれる手法で惑星を探索している。トランジット法は,惑星が主星の手前を通過(トランジット)するさいの主星の減光を捉える方法であり,主星の減光率から惑星の半径を測ることができる。また,発見された惑星に対して地上や宇宙から追観測を行うことで,惑星の質量や大気組成を測ることが可能である。

一方,じつは,テスの観測だけでは惑星の「候補」しか発見することができない。惑星候補が本物の惑星かどうかを確かめるためには,地上の望遠鏡を用いた追観測が必要不可欠である。そこでわれわれの研究チームでは,テスが発見する惑星候補の中から効率的に本物の惑星を見つけ出すとともに,発見した惑星の特徴(質量や大気の性質など)を詳しく調べることをおもな目的として,惑星のトランジットを多波長で同時に観測出来る観測装置「マスカット(MuSCAT)」 を計3台開発した(それぞれ岡山,スペイン,ハワイの望遠鏡に搭載)。現在,これらの装置を用いてテスが発見した惑星候補の網羅的な観測を進めている。

   
白色矮星(WD1856+534, 左)をまわる巨大惑星(WD1856b,右)の想像図。惑星は白色矮星よりも約7倍大きい。©NASA’sGoddard Space Flight Center

そして今回,われわれが観測した天体の一つであるWD1856+534と呼ばれる白色矮星に,白色矮星としては初めて惑星(もしくは低質量の褐色矮星)が存在することを国際協力で突き止めた。白色矮星は太陽の約8倍以下の質量をもつ恒星の成れの果ての姿であり, 恒星が内部の燃料(水素)を使い果たし,一度膨張して巨星となったあと,外層を放出して中心に残った高 密度の天体である。そのような劇的な進化を遂げた天体のまわりにも惑星が存在し得ることが,今回の発見で初めて明らかとなった。この発見は,われわれがもつ「惑星」の概念をさらに広げるとともに,この惑星がどのようにして恒星進化の激変期を生き延びたのかという新たな問いを投げかけている。

本研究成果は,Vanderburg et al. Nature 585, 363 (2020) に掲載された。

(2020年9月17日プレスリリース)

理学部ニュース2021年1月号掲載



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