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理学部ニュース

日本への留学と食生活 −マシマシ−

Cao Ruixiao(物理学専攻 博士課程1年生)
筆者


自分の選択の理由を説明するのは大変難しいことだと思う。しかし,「なぜ日本に来て勉強しているのか」と聞かれたら,最初に頭に浮かぶのは「食べ物」である。笑われてしまうかもしれないが, 確かにそれが海外で勉強することを決めた理由の一つだ。生まれた時から東アジアの食べ物の大ファンであるわたしにとって,お米を主食とする料理も,料理の作り方も,食習慣が似ている国に住むことができるのはとてもすばらしいことである。

もちろん,日本に,そして東大の理学部に来たもっとも直 接の理由は研究の興味である。学部生時代のわたしは,物理を専攻して頑張っていたのと同時に,高校生時代からプログラミングに興味を抱いていたため,大学院は計算物理関連の研究をしようと思った。そして今の教授と研究室に出会って,研究テーマと自分のやりたいことが完全に合っていることに驚いた。今いる藤堂眞治教授の研究室は,モンテカルロ法,テンソルネットワーク,機械学習や量子計算など,いろいろな領域が研究されている。どの領域でも,自分のアイデアを議論できる、もしくは疑問を解消できる,そしてアドバイスもくれる先生と学生がいるのは大変嬉しい。そして理学部も,研究のライフラインである,最先端のスーパーコンピュータや,本,論文などを提供し,自由に使えるようにしてくれている。このような環境で研究できるのはとても幸せなことである。

それはともかく,理学部を好きな理由はほかにもある。例えば,人と人との「距離感」である。 それを具体的に説明するのは難しいが,簡単に言うと,理学部は「一人で自分のやりたいことに集中できる」ところである。普段はいろいろなセミナーでほかの人と議論することで,いろいろ学ぶことができる。また,飲み会などで研究室の先生と先輩,後輩とカルピスを飲みながら,誰かが頑張って日本の地図を描こうとしたけれども県の位置を間違ってしまったことに笑い合い,楽しい時間を過ごすこともある。しかし,もし自分にやりたいことがあれば,参加する気がそれほどないイベントには参加せず,リラックスして自分のことに集中することができる。学部生時代も,そのような大学に所属していた。そしてそのことを今でも感謝している。 人によって考えが違うかもしれないが,自分はこのような環境がとても心地よいと思う。

研究はもちろん重要だが,研究以外の生活もとても充実している。留学生として,いくつかのプログラミング講義のTAになった。上でも書いたが、プログラミングは私にとって重要な興味の一つであり,TAとしての時間はとても楽しかった。 いろいろな質問が,講義中やメールで来て,それをひとつ一つ解決し,自信を持って返答した。 その経験は私にとって日本語のいい練習でもあった。予想できない状況ですぐ返さなければならない,でもそれは自分が一番 理解しており,そして一番興味を持っている領域でもある。緊張もしていたが幸せな時間だった。

日本を選んだ理由の一つは食生活と言ったが,実は一つだけ悩みもある、それは食堂などで提供されているご飯の並盛りや大盛りは,自分にとってはちょっとサイズが小さいこと。とある日,神奈川から来た友達に,学校の近くでご飯に誘われた。 自分の外食歴はまだそれほどなく,友達に行く場所をまかせたが,行ったのは近くのラーメン屋だった。自分は普段通り,大盛りを注文し,なにが来るのか全然知らずに,トッピングも友人に任せた。彼がなにを言ったかは忘れてしまったが,多分その言葉にはたくさんの「マシマシ」が入っ ていた。そして出てきたラーメンは,もやしの山の上に大量のマヨネーズが載っており,そしてその下にはあふれるほどの麺が入っていた。それを完食し,大満足した私は,このジャンル(多分 「二郎系」と呼ばれている)のラーメンの大ファンになった。それから,エネルギーが足りないと感じるたびに,このような店にいくことになった。

日本は「住みやすい国」とよく言われるが,わたしがそれを一番感じるのは交通である。4年前,日本語がほとんどできない状態で日本に旅に来た時も,便利なスマホアプリと精確なダイヤのおかげで,一人でいろいろ回れたことは今でも忘れられない。一緒に記憶に残ったのは,品川から電車に乗ったら,一時間後に海を距離ゼロで見ることができたことだった。今ではもう日常になったが,電車に乗って,ほかのことをなにも考えず,ただ自分がそんな複雑な路線の中を走っていることを想像するだけでとてもリラックスできる。山手線に沿って,1日かけて東京を徒歩で一周したこともある。全然知らない駅や場所に行って,自分だけの時間を過ごし,最高の一日だった。「無意味な」旅行で自分の悩みを全部捨てて,他人の生活や風景を目 で見る,そして体で感じるのは,今でも大好きだ。もちろん大変疲れたけど(笑)。

PROFILE
2020- Present Doctoral student, School of Science, the University of Tokyo
2018-2020 Master's degree in Physics, School of Science, the University of Tokyo
2014-2018 Bachelor's degree in Physics, Bachelor's degree(double major) in Computer Science and
Technology, Department of Physics, Peking University.
Born in Xi'an, Shaanxi province in China, a city that has been the capital of dynasties and countries for thirteen times in history. With a lot of places of interest due to the long history, and also near to Mount Hua, one of "the five mountains", at the top of which the photo in the article was taken.

 

理学部ニュース2021年1月号掲載

 


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