「相対論と宇宙の事典」
道村 唯太(物理学専攻 助教)
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アインシュタインが一般相対性理論を発表してから100年後の2015年,LIGO(ライゴ)により重力波が初検出された。 現在までに50を超える重力波イベントの検出が報告されており,我々が知らなかった宇宙の姿が次々と明らかになっている。観測された重力波は相対論の予言とぴたりと一致しており,現在までにほころびは見つかっていない。相対論の予言能力の高さには改めて感嘆するばかりだ。
2017年には重力波,2019年には宇宙論,2020年にはブラッ クホールと近年のノーベル物理学賞は関連分野の受賞が連発しており,注目の高さが伺える。今後もKAGRA(かぐら) による重力波の偏極モード検証,LISA(リサ)による超大質量ブラックホールの観測,LiteBIRD(ライトバード)によるインフレーション起源の原始重力波の観測など,わくわくする計画が目白押しである。素晴らしい時代に生まれ た幸運に感謝である。
このようにますます魅力的な相対論について,事典形式でまとめたのが本書である。各項目の執筆者は実にさまざまであり,項目によってはかなりマニアックなことまで解説されているのが面白い。私が書いた項目は実は2016年に書いたのだが,今読み返してみると調子に乗って細かく書きすぎた気もする。いずれにしても各項目は数ページの読み切り形式なので,気になった項目から気軽に読んでみると良いだろう。個人的にはコラムを真っ先に読んでしまった。 どの項目も執筆者の個性も見えて非常に面白く,相対論研究への情熱がつまった事典である。
理学部ニュース2021年1月号掲載