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理学部ニュース

  研究科長・学部長あいさつ

 

 研究科長・学部長着任にあたり
知的好奇心が拓く世界観

 理学系研究科長・理学部長
 田近 英一
 (地球惑星科学専攻 教授)

略歴

東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授。日本惑星科学会会長,公益社団法人日本地球惑星科学連合会長,第24・25期日本学術会議会員および同地球惑星科学委員会委員長などを歴任。1987年東京大学理学部地球物理学科卒。1992年東京大学大学院理学系研究科地球物理学専攻博士課程修了。博士(理学)。

理学系研究科・理学部は,1877年の創設以来,国内はもとより世界的な理学の研究教育拠点として,世界をリードする研究者や社会に貢献する優秀な人材を数多く輩出してきました。原理・原則に強いこだわりを持ちながらも,既存の枠組みにとらわれない自由な発想を大切にし,常に挑戦する姿勢で新しい研究領域を切り開き続けてきました。

理学とは,私たちを取り巻く自然界の理を探究する学問分野であり,自然界で生じる諸現象や自然法則の理解をめざす,人類の知的好奇心に根ざした知的営みです。「知りたい」という思いが理学研究の出発点であり,その探究を通じて普遍的な真理への理解を深め,知の体系化を進めながら,人類の自然観や宇宙観の形成に大きく寄与してきました。理学は直接的に社会の役に立つことを目的とした学問分野ではありません。しかし,そこで得られた知見は,長い年月を経て,あるいは思いがけない形で,産業や社会の発展に大きく貢献してきました。人類はこうした知をさまざまに応用することで,現代文明の礎を築いてきました。

理学には,人類の世界観や価値観に深い影響を与え,人々に大きな夢をもたらす側面があります。宇宙や生命の起源と進化をめぐる問いは,その象徴的な例です。たとえば太陽系外惑星の発見は,私たちの宇宙観を大きく変えました。地球や太陽系のような惑星系も,宇宙には広く存在することが明らかになりつつあります。現在,太陽系外惑星の大気に生命活動の痕跡を探ろうとする観測研究や将来計画が,世界中で精力的に進められています。このように,人類の世界観を大きく変えうる科学的探究は,理学の魅力を象徴しているといえるでしょう。

一方,レーザー,半導体,MRI(磁気共鳴画像法),mRNAワクチン,AI(人工知能)などは,かつては直接的な実用性が見えにくかった基礎研究から生まれたものです。量子コンピュータや核融合エネルギーといった次世代技術も,基礎科学の発展の上に築かれています。現代社会を支える多くの革新的技術も,その源流をたどれば基礎科学の研究に行き着きます。

理学系研究科・理学部では,学生や研究者の自由な発想に基づく活発な研究活動を支援するため,さまざまな改革を行ってきました。とりわけ,次世代の育成は大学にとって最も重要な使命であることから,学生の国際教育プログラムの拡充やさまざまな経済的支援の充実に力を入れています。私たちが何よりも大切にしているのは,次世代の研究者が,失敗を恐れず,前例にとらわれることなく,未知の問いに果敢に挑戦できる環境を守ることです。そうした環境のもとで,ここで学び,研究する学生や若手研究者の中から,将来,人類の自然観を塗り替えるような画期的な成果を生み出す研究者が育つこと――それこそが私たちの重要な使命です。

2027年は,東京大学および理学部の創設から150周年にあたる節目の年です。私たちは2002年に制定した「大学院理学系研究科・理学部憲章」に掲げる「知の創造と継承」「人材育成」「自律と体制」「差別・偏見の排除」「社会貢献」という理念のもと,これからも世界最高水準の教育・研究を追求するとともに,国際化や多様性・公平性・包摂性の推進にも努めながら,自然界の謎を問い続け,人類の知の地平を切り拓いていきたいと考えています。

2026年度
理学系研究科執行体制
研究科長・評議員 田近 英一(地惑)
副研究科長・評議員 小林 研介(物理)
副研究科長 榎本 和生(生科)
小澤 岳昌(化学)
研究科長補佐 吉田 直紀(物理)
佃  達哉(化学)
橘  省吾(地惑)
藤井 通子(天文)
事務部長 村岡  俊

理学部ニュース2026年5月号掲載