金より貴重な奇妙な粒子を創る現代の錬金術師
中村 哲
（物理学専攻 教授／クォーク・核物理研究機構長）
1995〜2000年 理化学研究所，ミュオン科学研究室/RAL支所研究員。2000〜2014年 東北大学大学院理学研究科物理学専攻 助教授を経て准教授。2014〜2022年 東北大学大学院理学研究科物理学専攻 教授（2022年より委嘱教授，名誉教授）。2020〜2022年 東北大学大学院理学研究科 副研究科長（併任）。2022年〜現在 東京大学理学系研究科物理学専攻教授。2024年7月〜 東京大学理学系研究科附属クォーク・核物理研究機構長
Q. 子供の頃好きだった教科は？
A. 算数と理科
良く考えれば答えが論理的かつユニークに決まるのが好きでした。それがそのまま現在の仕事に繋がっています。国語とか社会は嫌いではなかったのですが，答えが一通りに決まらないのがすっきりしないと感じていました。でも文章を読んだり書いたりすることや，様々な場所を訪れてそこの文化や歴史について知ることは好きです。
Q. 座右の銘は？
A. 「幸運は準備ができた者に微笑む」,「試練は，それを乗り越えられる人にしか訪れない」
前者は常に幸運が訪れるように万全の準備を整えておきたい，という努力目標です。しかし，実際の研究はなかなか思うようには進まないことの方が多いです。実験本番になってトラブルが続出して「これで実験ストップか？」と思うこともしばしばあるのですが，後者の言葉を胸に，できる限り楽観的にトラブルに対処するように努めています。
Q. 学生さんにおすすめする本や教科書は？
A. 「ご冗談でしょう，ファインマンさん」
QED（量子電磁力学）を朝永，シュヴィンガーと共に完成させノーベル賞を受賞した型破りでユーモアに満ち溢れたファインマンの回顧録です。とにかく面白い！
Q. 中高生の頃、どんなことに興味を持っていましたか？
A. マイコン（今でいうパソコン）
今とは違い当時は貴重だったマイクロコンピュータを自分で所有する（マイ・コンピュータ）ことにわくわくしていました。中学入学祝いを握りしめて秋葉原に向かったことを思い出します。自分でメモリを増設したりクロックアップしたり，半田ごて片手に「魔改造」する余地があったのが楽しかったです。そもそもなぜマイコンに興味を持ったかというと，当時，小学校で流行っていたラジコンについて知りたいと思い，父親にラジコンの本をねだったら間違えてマイコンの本を買ってきてくれたのがきっかけです。マイコンの本を読んだらラジコンへの興味は吹き飛びました。
Q. 東大理学部のいいところはここ！
A. 優秀で変わった人が沢山いること
優秀でかつ変わった友人，先輩，先生がたくさんいる，という環境は非常に恵まれていると思います。周囲に変わった人がたくさんいると，自分が多少変でも，周りがもっと変なので問題になりません。単に変人ばかりだと組織として困りますが，皆さん，優秀なので大きな問題にはならないように振る舞うことができています（たぶん）。
Q. インスピレーションの源は？
A. 人とのディスカッション
人とディスカッションしていると自分の考えを整理する必要があり，また互いの意見の問題点を一生懸命考えるのでそれが新しいインスピレーションに繋がることが多いと思います。
Q. 趣味はなんですか？
A. 旅行
普段とは違った場所で美味しいものを食べると幸せを感じます。研究者をしていると共同研究や国際会議で世界中の色々なところに行けるので，様々な場所で，異なった食事，文化を楽しむことができます。国内旅行だと温泉に入っていると幸せです。
Q. 自分は運がいいと思う？
A. 思う
自分が面白いと思えることを一生の仕事にできたのだから，とても運が良かったと思います。
Q. 転生できる，または，タイムスリップできる，または動物に生まれ変わるとしたら？
A. タイムスリップ
今後の科学の発展を見るために未来に行ってみたいです。過去に行って，現在の知識を駆使して大発見の連続というのも面白いかもしれませんが，ちょっとずるいですよね。
Q. 宇宙人はいると思う？
A. いないと思う
我々とは全く別の形態の生命体はいても良いと思いますが，「人」とは似ても似つかないものである可能性が高く，我々は「宇宙人」と認識できないのではないかと思います。普通の人がイメージするような「宇宙人」はいないと思います。
Q. 初恋はいつですか？
A. 小学生
初恋がいつか，ということに理由を述べるのは難しいですが，敢えて理由を挙げれば，中学・高校は男子校だったので，学校で女性が周囲にいたのは，小学校の次は大学になります。大学生の恋愛は初恋とは言い難いので小学生のときに仲の良かった女の子とか先生が初恋，ということになるのではないかと思います（妹がいるので中・高校時代に女性がまったく周囲にいないというわけではなかったのですが…）。
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