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理学部ニュース

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理学部ニュース2025年9月号掲載
理学エッセイ>

コーヒーの二つの役割

高津 飛鳥(数理科学研究科/数学科兼担 教授)

「どんな定理を作ってるの?」「大学での仕事って何?」「どんな格好で仕事に行くの?」「普段,何食べてるの?趣味は何??」久しぶりに会う友人や初めて会う人に,大学で数学者をしていると言うとよく尋ねられる質問である。

どんな定理を作っているか。まず,個人的な感覚では定理を作ったことはない。アルフレッド・レーニ(Alfréd Rényi)の言葉「a mathematician is a machine for turning coffee into theorems」の真意はわからないが,定理はまったくの無から作られるのではなく,すでにそこに在って我々はそれを見つけだしているだけだと私は考えている。よく「今さら新しい定理があるの?」と訊かれるが,科学が発展して深海に潜ったりブラックホールを観測できたりと可能性が拡がったように,数学も進化して未開の地で新しい景色が見えるようになっている。そして新発見の一方で,先達が築いた数学の基礎土台—たとえば紀元前に確立されたユークリッド原論は,改修や増補工事を経て今もなお現役である。

大学での仕事は何か。説明しやすいものは講義やゼミである。講義に対するあるある質問は1クラスの受講者数で,私が担当したなかで最小は1(専門科目),最大は100越え(教養科目)である。同じくよく訊かれる講義の数や内容は所属により異なり,とくに内容は中身が同じであっても展開の仕方が色々あるので,教員同士でも話題にあがる。また,数学のゼミは板書で少人数制の輪講形式(発表者が専門書や論文などを説明する形式)が多い。他の仕事には研究や組織運営などがあり,運営については「それって大学教員の仕事?」と驚かれることもある。ふふふふ。

服装について規定はないが分野ごとのカラーがあり,数学はいたって自由である。私は授業も講演も普段着で行うが,一般的に講演はスーツだと思われているようである。実際,学生時代に研究集会前に実家に立ち寄ったら,母と姉が私に今からスーツを買いに行かせるか,時間がないので姉のスーツで誤魔化すかの議論を始めた。そして私が普段着で行くと言ったら激しく責められたが,懇々と説明した結果,普段着でも問題ないと納得してくれた。しかしなぜか赤い靴だけは駄目だと言われ,姉の白いスニーカーを借りて講演した。そんな私は今日も今日とて赤い靴で講演をする。

講演後、高確率で白くなってしまう私のジーンズ(と端に映る赤い靴)  

そしてもちろん数学者ならではの食べ物はなく,食に凝る人からまったく興味がない人まで千差万別である。私は食べることは好きだが料理は苦手で,普段はグラノーラばかり食べ,そして豆乳入りのコーヒーばかり飲んでいる(最近は海外出張にコーヒーミルと携帯電気ポットを持参する程度には,コーヒーばかり飲んでいる)。私にとってコーヒーは集中力を高めて数学の原料になるのみならず,行き詰まり凝り固まった頭を解きほぐすための箸休めにもなる。食事と同様に,趣味や休日の過ごし方も人それぞれである。私は大好きなバンドが3年前に活動再開したので,最近はライブに行ったりもする。本エッセイの題目もこのバンドの曲名からお借りした。どのバンドかわかった方はぜひ,お声がけ下さい。

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