「恐竜学」
平沢 達矢(地球惑星科学専攻 准教授)

小林 快次 (編) 「恐竜学」 |
東京大学出版会(2025年) |
毎年夏になるとさまざまな博物館,イベント会場で恐竜骨格の展示イベントが開催され,子供はもちろん,大人も大勢集まる。毎年あると新鮮味がなくなるかというとそうでもなく,昔から図鑑に載っているおなじみの恐竜だけでなく初めて名前を聞くような恐竜が展示されていたり,まったく知らなかった恐竜の生態の一面が解説されていたり,各イベントで結構展示内容が異なっている。これは,恐竜の多様性が高いことだけでなく,恐竜に関する研究が日進月歩,進展していることを反映している。化石としてしか知られていない恐竜の体,生態,進化に関して,さまざまな分析技術の発展によって従来まったく謎であったこと(たとえば体色!)も解明できる時代が到来しているのだ。
そのような研究分野の大学生や大学院生向けの教科書としては,かつてはアメリカやイギリスで出版された書籍とその翻訳本しか存在しなかった。私も学生の頃,そのような書籍で勉強したものである。だが,日本に真鍋真先生しか恐竜の研究者がいなかった当時(20年前)と異なり,現在は日本で何人もの研究者が世界レベルの恐竜研究を展開している。本書は,その中の13名の気鋭の研究者により,恐竜研究のさまざまなトピックを包括的に扱った初めての「純国産」の教科書である。英語で書かれた教科書に匹敵する情報量と専門性が備わっており,学生の方だけでなく,一般の方や教員の方にもぜひ手にとってもらいたい。
(関連講義: 地球生命進化学,古生物学(理学部))