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理学部ニュース

橘 省吾教授が文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞

杉田 精司(地球惑星科学専攻長 教授)

 



橘 省吾 教授

宇宙惑星科学機構の橘省吾教授が,2025 年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞されました。心よりお慶び申し上げます。

橘教授の貢献は,受賞業績名「小惑星リュウグウ探査と太陽系化学進化に関する先鋭的研究」が表す通り,探査プロジェクトを牽引する地道な活動と理学的に尖った研究を兼ね備えた希有なものです。橘教授は,小惑星探査機「はやぶさ2」の計画立案からサンプル分析に至るまで,全局面で貢献され,太陽系化学進化の新しい視点を提示されました。特に印象深いのが,C 型小惑星探査の意義を明確に示されたことです。

現在ではその科学的価値は広く認められていますが,当初は疑問視する声も少なくありませんでした。典型は「はやぶさ2が目指すC型小惑星は水質変成を受けているので太陽系の最初期の情報は失われてしまっている。変成を受けていない彗星などに比べて探査価値が低い」との批判でした。これに対し,橘教授は「水質変成があったからこそH2O が安定性の高い含水鉱物に変化して,温暖な地球型惑星形成域に大量に到達できた。水質変成こそ太陽系初期の物質輸送や惑星気水圏形成の鍵となる過程であり,C 型小惑星の探査価値は極めて高い。」と説く論文を発表されました。

その論文は説得力にあふれ,私たちリモートセンシング観測チームも安心して探査に臨むことができました。この考え方は,直後に始まった米国のOSIRIS-REx 探査でも使われており,国際的な潮流となったことが分かります。このたびの受賞は,こうした橘教授の優れた研究と長年のご尽力が評価された結果だと思います。今後のさらなるご活躍を,心よりお祈り申し上げます。