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理学部ニュース

菅 裕明教授が「第2回神戸賞大賞」を受賞

佃 達哉(化学専攻長 教授)

 



菅 裕明 教授

中谷財団が設立40周年を記念して設立された「神戸賞」の第2回受賞者に化学専攻の菅裕明教授が選ばれました。生命科学と理工学の融合境界領域で独創的な研究を進める研究者が選ばれる賞であり,菅教授がこれまで進めてきた「特殊ペプチド創薬の開拓とイノベーション」が高く評価されたと思います。菅教授は基礎研究から応用研究,さらにそれを社会実装するイノベーションまで幅広い活躍をしておられることは皆さんも御存知と思いますが,この場を借りて簡単に菅教授の研究をご紹介いたします。

菅教授は,独創性が極めて高い「フレキシザイム(人工リボザイム)」を駆使した「RaPIDプラットフォーム」技術を開発して,鋳型mRNAからさまざまな非タンパク質性アミノ酸を組み込んだ「特殊環状ペプチド」の翻訳合成に成功しました。この一連の技術開発を可能にしたのは,生物に普遍な遺伝暗号を自在に書き換えることを目指した基礎研究が根底にあります。さらに,この技術は疾患原因となる標的タンパク質に強く結合する薬剤を高確率かつ迅速に探索することを可能にし,中分子医薬品として知られる「特殊ペプチド創薬」分野を開拓しました。

この技術は多様なタンパク質阻害剤,活性化剤の発見とその作用機序に関わる基礎・応用研究を加速するとともに,空前の汎用性ゆえに現在,国内外の医薬業界における創薬活動に広く活用されています。菅教授は2023年にウルフ賞,2024年に日本学士院賞も受賞されており,あらためて神戸賞の受賞に加えて,お慶びを申し上げます。