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理学部ニュース

佐々田槙子教授が「ナイスステップな研究者2024」に選ばれました

会田 茂樹(数理科学研究科/数学科兼担 教授)

 



佐々田 槙子 教授

佐々田さん,「科学技術・学術政策研究所(NISTEP)ナイスステップな研究者2024」に選定されたこと,おめでとうございます。数理科学研究科の同僚として,また同じ確率論分野の研究者として大変うれしく思います。

私が佐々田さんの名前を知ったのは,2010年の日本数学会建部賢弘奨励賞を受賞された時でした。そのときの受賞題目は「非勾配型の系に対する流体力学極限」で,佐々田さんは,現在もこの「流体力学極限」を中心に幅広い範囲で研究を行っています。流体力学極限というのは,大雑把に言って,ミクロな系の確率的な時間発展において時空や粒子数などのスケール極限を取ることによりマクロな偏微分方程式(流体の方程式以外も含みうる)を導出することを言います。この分野では,扱いやすい勾配型のモデルが研究されていましたが,より現実的な非勾配型のモデルに適用可能なヴァラダン(Varadhan)の研究がブレイクスルーとなり,これが流体力学極限研究の有力な手法を与えることになりました。ただし,この手法は,モデルごとに個別の取り扱いが必要であり,統一的に扱うことはできていない状況でした。佐々田さんは,他分野の研究者も巻き込んで,この問題に取り組まれ,多くの具体的なモデルに関して統一的な取り扱いを示すという重要な仕事をされています。さらに,(超)離散可積分系の時間発展へのPitman変換を用いたアプローチや,箱玉系のモデルの一般化流体力学極限(これは,局所平衡の考え方からマクロな方程式を導出する通常のものとは大きく異なります)を研究するなど新分野を拓くような研究をされています。ますますのご活躍を期待しています。