下浦享名誉教授「2024年度仁科記念賞」受賞
酒井 英行(東京大学名誉教授)

下浦 享 東京大学名誉教授
理学系研究科附属原子核科学研究センター(CNS)の下浦享東京大学名誉教授(現在,理化学研究所開拓本部 研究員)が「4中性子状態の実験的研究」の研究により仁科記念賞を受賞されました。心よりお慶び申し上げます。
仁科記念賞は,故・仁科芳雄博士の功績を記念して,原子物理学とその応用に関して優れた研究業績をあげた研究者に対して贈られるもので,国内の物理学分野において最も権威ある賞です。
この受賞は,半世紀以上にわたり未解明であった4つの中性子が強く相関した状態(4n核と略)が存在することを示したことによります。下浦名誉教授は,理化学研究所 RI ビームファクトリー(RIBF)で供給される中性子過剰 8He核の二次ビームを利用する2つの異なる実験方法を提案しました。
最初の実験は,背景雑音がほとんどない「二重荷電交換反応(8He + 4He → 8Be + 4n)」を用いて測定され,8Beエネルギースペクトル中に4n核を4イベント発見しました。この8Beの測定は,科研費特別推進研究(代表 酒井英行)により,CNSが主体となって建設したSHARAQ 磁気分析装置が用いられました。
その後4n核の生成効率が高い「ノックアウト反応(8He + p → p + 4He + 4n)」による測定がSAMURAI磁気分析装置で行われ,4n核の存在を高統計精度で確認し,半世紀に及ぶ謎を解決しました。
今回の結果は「多中性子系の原子核物理学」という新たな研究領域を拓くもので,中性子 3 体核力や中性子星の内部構造などの研究が大いに進むと期待されます。下浦名誉教授の益々のご活躍を祈念いたします。