森井嘉穂さんが2024年度ロレアル-ユネスコ女性科学者日本奨励賞を受賞
中村 文隆(国立天文台/天文学専攻 兼任 准教授)

森井嘉穂氏
天文学専攻博士課程3年の森井嘉穂さんが,「第19回 ロレアル−ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」を受賞しました。この賞は,優れた業績を上げた将来有望な女性科学者を支援・顕彰するものです。森井さんは「電波観測による重い星の誕生過程の解明」という研究でこの栄誉を受けました。
従来の星形成研究は,主に太陽質量程度の中小質量星に焦点が当てられていました。太陽の約10倍以上の質量を持つ大質量星は遠方に位置するため,その形成過程は十分に解明されていませんでした。超新星爆発を経てブラックホールや中性子星となって銀河環境に大きな影響を与える,大質量星の誕生過程が中小質量星と同じかどうかは,天文学の重要な未解決問題でした。
森井さんは,この課題に取り組むため,チリにある巨大電波干渉計ALMAを用いて,大質量星の誕生現場とされる赤外線暗黒星雲を観測しました。観測データの解析により,コアと呼ばれるガスが密集した星の母体となる構造の過去最大規模のカタログを作成しました。これにより,大質量星は軽い小さなコアがガスを取り込み成長することで誕生する可能性が示されました。より精緻な形成シナリオの構築を目指し,現在も精力的に研究を続けています。
何事にも真摯に取り組み,膨大なデータ解析をほぼ一人で行ってきた森井さん。さまざまな解析手法を試みながら,大質量星形成過程におけるガスの獲得メカニズムという新たな発見に至ることができたのは,日々の努力が生んだ賜物であると思います。今後も,さらなる重要な科学的課題に挑み続け,多方面でさらなる活躍をされることを心より期待しております。