塩見美喜子教授と伊藤創祐准教授が文部科学大臣表彰を受賞
広報誌編集委員会
上:塩見美喜子 教授
下:伊藤創祐 准教授
生物科学専攻の塩見美喜子教授と生物普遍性研究機構の伊藤創祐准教授のおふたりが,2024(令和6)年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞されました。科学技術に関する研究開発等において顕著な成果を収めた方々に与えられる賞です。心からお祝い申し上げますとともに,今後の益々のご活躍を期待いたします。
塩見教授は「生殖能維持に不可欠なpiRNA機構の分子機序の研究」という業績で科学技術賞の受賞です。細胞内の小さなRNA分子が遺伝子のはたらきを抑える「RNAサイレンシング」は,生命活動において重要な役割を担っています。塩見教授らは,生殖組織においてゲノムが破壊されないように保護する小分子RNA(piRNA)のはたらきを解明しました。piRNAの機能は生殖能力の維持に必須です。不妊治療などに効果が期待できる新薬や診断システムの開発,ひいては我が国が抱える「少子化問題」の解決に寄与する可能性もある研究です。
伊藤准教授は「情報幾何学に基づく非平衡熱力学の研究」という業績により若手科学者賞を受賞されました。ブラウン運動や分子モーターのような確率的に振る舞う非平衡系について,その熱力学的性質に関する研究が近年盛んに行われています。伊藤准教授は,非平衡熱力学における情報理論的側面を深化させることで,生体系に適用可能なエネルギー散逸と情報処理の正確さの関係を表す普遍的な法則を見出しました。こうした研究成果は,情報処理のエネルギー散逸への理解や情報処理の数理の発展に貢献するとともに,将来の省エネルギーデバイス開発や機械学習の手法開発への応用に繋がると期待されます。
このほかにも,理学部からは岩木耕平准教授(数学科),谷中瞳准教授および横矢直人准教授(情報科学科)が,文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞されました。まことにおめでとうございます。
*この文章は,小林武彦教授(定量生命科学研究所,塩見教授記事),古澤力教授 (生物普遍性研究機構,伊藤准教授記事)がそれぞれ執筆されたお祝い記事を,広報誌編集委員会で再編集したものです。