生物科学専攻の今野直輝さんが日本学術振興会育志賞を受賞
岩崎 渉(新領域創成科学研究科/生物科学専攻兼担 教授)
今野直輝 氏
地球上には実に多様な生物が生息しており,それによって,私たちの生存を根底から支える生態系が成立しています。こうした生命の多様性がいかにして生まれ,今後どう発展するのかを理解するためには,その進化の背景にあるルールを解明することが重要です。こうした背景のもと,今野直輝さん(博士課程2年生)は,大規模データに基づいて生命進化のルールを解明する生物情報科学分野において,卓越した研究成果を挙げてきました。とりわけ,長期的な時間スケールで起きる生命システムレベルの進化の予測はこれまで困難だとされてきましたが,今野さんは,過去の進化過程のパターンを学習し,さらに未来の進化を予測する機械学習手法Evodictorを開発し,実際に数千種のバクテリアの代謝システムの進化を解析することでその進化が予測可能であることを発見しました。これは基礎生物学の枠組みに限らず,医学分野における薬剤耐性遺伝子を獲得しそうな種の未来予測や,生物工学分野における特定遺伝子を導入可能な種の予測など,将来の応用にもつながる重要な成果です。
この研究成果を含む業績が評価され,「過去の進化の解明と未来の進化の予測のためのバイオインフォマティクス」というテーマによる受賞に至りました。これからも,今野さんのご活躍を心より祈ります。