ショクダイオオコンニャクが13年ぶりに開花
川北 篤(植物園長(本園)/生物科学専攻 教授)
2023年12月8日午前のショクダイオオコンニャク(撮影:邑田仁)
理学系研究科の附属施設である植物園(本園,通称:小石川植物園)で2023年12月7日(木)夜,世界最大の花序をもつショクダイオオコンニャクが13年ぶりに開花した。ショクダイオオコンニャクはインドネシアのスマトラ島の固有種で,小石川植物園では1991年(日本で初めての開花),2010年に続く3度目の開花である。
ショクダイオオコンニャクは通常の年は1枚の巨大な葉を地上に出し,光合成をして地下の球茎(イモ)に養分を蓄える。開花にきまった周期はなく,何年かかけて球茎が十分に太ると,ある年巨大な花序が姿を現す。今回の花序は高さ215.5 cm,花弁のように広がる赤紫色の仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる部分の直径は110 cmであり,2010年に開花した株を高さで50 cm以上上回る立派な株であった。植物園の職員が開花を確認したのは12月8日朝だったが,タイムラプスカメラの記録から仏炎苞が開き始めたのは7日の午後7時ごろだった。有名な「魚が腐ったような匂い」は夜が最も強く,この匂いで花粉を媒介する昆虫をおびき寄せる。花序の中心にそびえるのは付属体と呼ばれる茎の先端であり(付属体の下方の仏炎苞に覆われた中に花がある),発熱して匂いをより遠くに届ける役割がある。昆虫に花粉を運ばせるためになぜこれほどまでに大きな花序を発達させる必要があったのか,植物の世界は不思議である。
開花翌日の12月8日から10日までは温室の開室時間を延長した特別公開期間とした。1万人を超える方々が来園され,その迫力ある異形をご覧いただくことができた。