「東京大学の先生が教える海洋のはなし」
茅根 創(地球惑星科学専攻 教授)
茅根 創・丹羽 淑博 編著 「東京大学の先生が教える海洋のはなし」 |
成山堂書店(2023年) |
海は,生命が産まれ,多様性を支え,水産物を与えてくれる。水や炭素などの循環を通じて地球環境を駆動し,容れ物である地形は長い時間を通じて変動し,私たちの生活の場をつくるだけでなく,地震・津波災害をもたらす。東京大学理学系研究科では,地球惑星科学,生物学の研究者が,さらに農学,工学,国際法,教育学にも海を対象として研究している研究者がいる。
本書は,東京大学の海研究の中から,バイオロギング,海洋観測,進化と多様性,魚の神経系,ウナギの生活史,水惑星の誕生,サンゴ礁・北極海・海洋循環と地球温暖化,津波,東京湾の地形について,研究の最先端を高校生にも分かるように解説したものである。文系からも震災と散骨についてコラムを執筆してもらった。サイエンスライターが研究者にインタビューして,専門的な内容をかみ砕いて執筆したので,高校生,教養学部生だけでなく,小中学生,大学生,研究者にも読んでほしい内容である。どの章の研究者も,計算機や実験室だけでなく,海洋という広大なフィールドで,新たな課題を見出し,目的のために新しい手法を開発して,海の研究に取り組む情熱を感じてもらえるはずである。本書を読んで,若い方々が海について理解を深め,海の研究を志してくれることを期待している。
本書の基盤は,東京大学の海洋研究者の分野横断の「海洋アライアンス連携研究機構」で,研究成果を初等中等教育に展開するために,教育学研究科附属海洋教育センターが,本書の構想・編集を行った。