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理学部ニュース

富永愛侑氏が「ロレアル−ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」を受賞

海老沢 研(宇宙航空研究開発機構/天文学専攻 兼任 教授)

 

「世は科学を必要としており,科学は女性を必要としている」という理念のもと,天文学専攻博士課程3年の富永愛侑さんが,2023年度 第18回「ロレアル−ユネスコ女性科学者日本奨励賞」を受賞されました。


富永愛侑 氏

 宇宙は「インフレーション」で誕生したという仮説を実証するために宇宙マイクロ波背景放射の精密観測を行うのが,JAXAのLiteBIRD計画です。富永さんは,宇宙線ノイズが観測に及ぼす影響を調べ上げ,最適な機上データ処理とそのアルゴリズムを提案することによって,プロジェクトの具現化に貢献しました。また,さまざまな宇宙現象を史上最高のX線エネルギー分解能で観測し,宇宙における元素の拡散を追いかけることができるJAXA のXRISM 衛星に対しても,詳細な観測シミュレーションを行って最適な観測計画を提案するとともに,地上試験に積極的に参加することによって,大きく貢献しました。このほかにも,富永さんは,JAXAの全天X線監視装置MAXIが2019年1月に発見した突発天体の解析を行い,それが比較的大きな質量を持つブラックホール連星であることを明らかにしました。さらには,特異な性質を持つことで知られている中性子星連星系についてNASAのNICER装置による斬新な観測提案を行い,その正体を解き明かそうとしています。

一人の大学院生が博士2年次終了までに,これほど多様な成果を挙げたことは称賛に値します。その業績が評価され,「宇宙の始まりから元素の拡散過程を経て物質の最終段階に至るまでの観測手法の開発と研究」というテーマによる授賞に至ったものです。これからも,多様な分野において,ますますのご活躍を祈ります。

 

 

理学部ニュース2023年11月号掲載

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