DATE2021.12.23 #Press Releases
星のゆりかごを撮影した画像から多数の浮遊惑星を発見
国立天文台
東京大学大学院理学系研究科
アストロバイオロジーセンター
概要
すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ(HSC)などを用いて星形成領域を撮影した画像から、およそ100個もの浮遊惑星が発見されました。星形成の理論モデルと比較した結果、これらのほとんどは、通常の惑星と同様に恒星の周りで生まれた後に、それぞれの惑星系から放出されたことが明らかになりました。宇宙空間を漂う惑星質量の天体について、その正体と起源に迫る重要な成果です。
太陽以外の恒星を周回する惑星(太陽系外惑星)の観測は目覚ましい発展を遂げ、これまでに発見された数は4500個以上に上ります。一方で、惑星程度の質量でありながらも、太陽系外惑星のように恒星を周回せずに宇宙空間を漂う天体の存在が、2000年頃から明らかになってきました。このような天体は「浮遊惑星」と呼ばれ、非常に暗く発見も散発的でした。
国際研究チームは、さそり座からへびつかい座にかけての星形成領域を、過去20年間にわたって観測した可視光線および赤外線の画像約8万枚を集約し、2600万個の天体の位置、明るさ、動きのデータをまとめました。さらに位置天文衛星で得たデータを組み合わせて、この領域にあると推定されるおよそ100個もの暗い天体を検出することに成功しました。近くに恒星が存在しない浮遊惑星を、一つの領域で均質に捉えた数としてはこれまでで最多となります。
なぜこれほど多くの浮遊惑星がこの星形成領域に存在しているのでしょうか。これらの浮遊惑星と同じ領域にあるより重い恒星に対して、分子雲から星が形成される理論モデルを適用したところ、今回検出された浮遊惑星が、星間ガスが自らの重力で収縮して生まれた天体であると考えるには、数が多すぎることが分かりました。これらの浮遊惑星は通常の惑星と同様に恒星の周りで形成された後に、惑星系から放出されたと推定されます。
大型赤外線宇宙望遠鏡などによる観測では、近くに明るい恒星がない浮遊惑星は好適な対象となります。今回発見された浮遊惑星は、その大気の研究や通常の太陽系外惑星との比較研究を行う上で、重要なサンプルとなることが期待されます。
図:星形成領域を漂う、木星質量の浮遊惑星の想像図。さそり座からへびつかい座にかけての星形成領域で、およそ100個もの浮遊惑星が検出されました。(クレジット:ボルドー大学)
この研究成果は、Núria Miret-Roig et al. “A rich population of free-floating planets in the Upper Scorpius young stellar association”として、英国の天文学専門誌『ネイチャー・アストロノミー』に2021年10月22日付で掲載されました。
なお、本研究成果には、天文学専攻の田村 元秀 教授が参加しています。
詳細については、国立天文台 のホームページをご覧ください。
詳しい解説は、 国立天文台 すばる望遠鏡 、アストロバイオロジーセンター のホームページをご覧ください。