2021/01/25

外側か?内側か?

~植物において表皮細胞が外部環境との境界に作られる仕組みを解明〜

 

東京大学大学院総合文化研究科

東京大学大学院理学系研究科

概要

陸上植物は、乾燥をはじめとする環境ストレスや病害を引き起こす有害な生物に囲まれて生きている。そこで、植物は特殊化した細胞をシート状に並べた表皮組織を外部環境との境界に発達させ、自らを保護している。表皮細胞が分化する際に重要な鍵転写因子は2003年に発見され、表皮細胞の分化を制御する分子的な仕組みについての理解は進みつつある。しかし、外部環境との境界、すなわち「位置」を細胞がどのように認識し、表皮細胞が適切な場所に分化するのかについては未解明のままであった。

今回、東京大学大学院総合文化研究科の阿部光知准教授らのグループは、細胞が植物体における位置を認識する仕組みを新たに見出し、「適切な場所で適切な細胞が分化するメカニズム」を解明した。研究グループは、シロイヌナズナを用いた分子遺伝学的手法と可視化技術によって、表皮細胞が分化するには鍵転写因子が発現するだけでは不十分で、外部環境との境界細胞で作られる特殊な脂質(極長鎖脂肪酸を含むセラミド)と鍵転写因子が結合し、鍵転写因子機能が安定に発揮されることが重要であることを発見した。

植物が陸上に進出した際に、過酷な外部環境から植物体を保護するために表皮細胞は発達したと考えられている。今後、地球環境が劇的に変化することが予測されているなか、外部環境との境界に位置する表皮細胞についての理解が深まることは、過酷な環境下でも丈夫な植物の作出につながると期待される。

図:ATML1と脂質との相互作用による細胞位置認識モデル
外側の細胞はVLCFA-Cerという”外側”の目印となる特殊な脂質を細胞膜成分としてもつが、内側の細胞はVLCFA-Cerを細胞膜成分としてもたない。表皮分化を司る転写因子であるATML1はVLCFA-Cerと結合したときのみ活性化されるため、外側の細胞のみが表皮細胞に分化する。

 

なお本研究には、大学院理学系研究科生物科学専攻 博士課程3年生の永田 賢司氏が参加しています。

詳細については、大学院総合文化研究科 のホームページをご覧ください。

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―