DATE2025.07.02 #Press Releases
磁気渦物質における角運動量反転現象の理論的発見
-ゲージ不変な熱力学が導く量子物質の新たな普遍性-
発表概要
物質のマクロな磁気特性や回転応答は、微視的粒子がもつ角運動量(回転運動の大きさと向きを表す物理量)が外部磁場や回転軸の方向に整列する「角運動量偏極」によって決まります。これまで角運動量偏極は、電子の固有角運動量であるスピンが支配的だと考えられ(図(a))、このスピン優位の描像は、物質科学のみならず大型加速器実験で生成される数兆度の高温物質の研究に至るまで、現代物理学の基礎概念として広く用いられてきました。
東京理科大学 理学部第一部 物理学科の豆田 和也助教(兼 理化学研究所 数理創造研究センター 客員研究員)、東京大学 大学院理学系研究科の福嶋 健二教授、浙江大学 物理学院 浙江近代物理中心の服部 恒一研究員らの共同研究グループは、強磁場と回転が共存する量子系の角運動量偏極では、スピンよりも粒子の軌道運動に由来する軌道角運動量が優勢となり、従来とは逆向きの偏極が実現することを理論的に発見しました(図(b))。また、角運動量偏極の反転という新たな物理現象は、固体物質を用いた実験やスーパーコンピュータによる数値実験からも検証可能であることを示しました。角運動量の概念は量子力学誕生以来の基盤ですが、本研究はその理解を大きく前進させました。
本研究成果は、2025年7月1日に国際学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載されました。
図:外部磁場、外部回転下における荷電粒子(正電荷)の角運動量偏極。(a) 弱磁場中では磁場と平行なスピン偏極が生じるが、(b) 強磁場中では軌道角運動量の寄与がスピンを上回り、磁場と反平行な偏極が生じる
関連リンク
発表雑誌
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雑誌名 Physical Review Letters論文タイトル Preponderant Orbital Polarization in Relativistic Magnetovortical Matter