search
search

Press Releases

DATE2025.01.22 #Press Releases

本州からカワニナの3新種を発見

―琵琶湖に起源を持つ貝類の湖外での多様化―

発表概要

日本の中央に位置する古代湖の琵琶湖では、淡水性巻貝のカワニナ属が大規模な種の多様化を遂げています。カワニナ属では、琵琶湖に起源を持つ種はそのほとんどが現在も琵琶湖水系のみに分布していますが、クロダカワニナSemisulcospira kurodaiは唯一、琵琶湖固有種に近縁ながら、静岡県から岡山県までの広い範囲に分布することが知られていました。クロダカワニナでは、先行研究によって種内に遺伝的に異なる4つの系統が見つかっていたものの、それらが独立種であるのかは十分に評価されていませんでした。

京都大学大学院理学研究科 澤田直人 博士課程学生(研究当時、現 東京大学大学院理学系研究科 特任研究員)、福家悠介 博士課程学生(研究当時、現 国立遺伝学研究所 研究員)、高知大学 農林海洋科学部 三浦収 教授の研究グループは、クロダカワニナの遺伝解析と形態解析によって、本種の分類学的位置を再定義するとともに、これまで学名がつけられていなかった3新種、タジマカワニナS. masudai(兵庫県、鳥取県に分布)、サキガケカワニナS. praecursa(静岡県、愛知県に分布)、ユメカワニナS. miurai(岡山県に分布)を記載しました。

上記4種は成貝殻の角度や彫刻の形態、胎児殻や歯舌の形態で互いに識別され、いずれの種もメスがオスよりも大きい成貝殻を持ちます。また著者らはクロダカワニナ種内の遺伝解析によって、本種内には4つの地理的集団が含まれること、さらに琵琶湖から湖外への進出で形成されたと考えられていた、琵琶湖を取り囲むような本種の分布域が、実際には中国地方に生息していた祖先が東方へ分布を広げたことで形成された可能性が高いことを示しました。この研究成果によって、カワニナ属の種多様性が再評価されるとともに、琵琶湖に起源を持つカワニナ属が抱える複雑な多様化の歴史の一端が明らかにされました。

本研究成果は2024年1月21日に生物学の国際学術誌「Systematics and Biodiversity」にオンライン掲載されました。


図:左からクロダカワニナの成貝殻標本、新種タジマカワニナの成貝殻標本、新種サキガケカワニナの成貝殻標本、新種ユメカワニナの成貝殻標本、新種ユメカワニナの生体

関連リンク京都大学

発表雑誌

雑誌名
Systematics and Biodiversity
論文タイトル