DATE2024.03.14 #Press Releases
欠陥によって誘起されるマヨラナ粒子の局在状態を観測
――現実物質におけるマヨラナ粒子の性質の解明――
東京大学
東北大学
科学技術振興機構(JST)
発表概要
東京大学大学院新領域創成科学研究科の今村薫平大学院生、水上雄太助教(研究当時、現在東北大学大学院理学研究科准教授)、橋本顕一郎准教授、芝内孝禎教授、京都大学大学院理学研究科の松田祐司教授、学習院大学自然科学研究科の山田昌彦研究員(研究当時、現在東京大学大学院理学系研究科特任講師)らの研究グループは、東京工業大学、仏エコールポリテクニークと共同で、環境ノイズに非常に強いトポロジカル量子コンピューターの実現の鍵となる「マヨラナ粒子」の局在状態が物質中の欠陥により誘起されることを明らかにしました。
これまで、磁性絶縁体α-RuCl3において、研究チームの報告を始めとして、マヨラナ粒子が存在する証拠が得られています。しかし、現実の物質中においては、どんなにきれいな試料においても必ず不純物や欠陥が存在しますが、そのような不純物や欠陥がマヨラナ粒子に与える影響は未だ明らかになっていませんでした。
今回、高エネルギーの電子線を照射することにより人工的に導入した欠陥がマヨラナ粒子の局在状態を誘起し、マヨラナ粒子の数が変化することを観測しました。このことにより、物質中のマヨラナ粒子の不純物に対する安定性を明らかにすることにつながると考えられます。マヨラナ粒子は磁場下において、非可換エニオンという特殊な粒子になり、トポロジカル量子コンピューターに応用可能と考えられています。そのため、本研究成果は物質中における非可換エニオンを用いたトポロジカル量子コンピューター実現の可能性を広げると期待されます。
本研究成果は2024年3月11日付けで、米国科学誌 Physical Review Xにオンライン掲載されました。
図:キタエフ模型(左図)とキタエフ量子スピン液体(右図)の模式図
一つのスピンに対して隣接する三つのスピンが結合しているが、三つの隣接するスピンからは、それぞれスピンを異なる方向に向かせる相互作用が働き、スピンはそのフラストレーションのために秩序化できず、量子スピン液体状態となる。キタエフ量子スピン液体においては、スピンが分裂し、マヨラナ粒子(黄色)が動き回る状態が実現する。
詳しくは、東京大学大学院新領域研究科 のホームページをご覧ください。
発表雑誌
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雑誌名 Physical Review X論文タイトル