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プレスリリース

DATE2023.08.23 #プレスリリース

生きたES細胞で転写因子の機能を分子精度で定量

-分化多能性を維持する新機構を発見、再生医療への応用が期待-

 

理化学研究所

広島大学

東京大学

発表概要

理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター先端バイオイメージング研究チームの渡邉朋信チームリーダー(広島大学原爆放射線医科学研究所教授)、細胞極性統御研究チームの岡田康志チームリーダー(東京大学大学院医学系研究科教授・同大学院理学系研究科兼務)、広島大学両生類研究センターの岡本和子助教らの共同研究グループは、マウスES細胞で働く転写因子(Nanog、Oct4)の挙動を1分子精度で定量解析し、ES細胞の分化多能性を維持するための新しいメカニズムを発見しました。

本研究成果は、幹細胞研究分野に新たな知見をもたらすほか、iPS細胞の作製効率の向上や品質の安定化などに貢献するものと期待できます。

ES細胞は、体のどの細胞にも分化できる性質(分化多能性)を持っています。NanogとOct4は、ES細胞が分化多能性を維持するために必須の転写因子であり、自分自身の発現をそれぞれ促進させるとともに、互いの発現も促進させます。これまでNanogやOct4の細胞内での分子動態とクロマチン構造の変化、分化多能性との関連性は明らかにされていませんでした。

今回、共同研究グループはタンパク質1分子の運動を観察できる特殊な顕微鏡を用いて、マウスES細胞が分化する瞬間のNanogとOct4の動きを1分子精度で観察し、DNA上での滞留時間や頻度など物理的な挙動に関するさまざまな特徴を定量しました。解析の結果、Nanogは分化が始まるとDNA上に長くとどまるようになるなどの新たな相関を発見し、NanogとOct4が協働してES細胞の分化が進み過ぎないように制御するという新しい「負のフィードバック機構」の提案に至りました。

本研究は、科学雑誌『The EMBO Journal』オンライン版(8月23日付:日本時間8月23日)に掲載されました。

 


今回の研究の流れを示す概略図

 

詳しくは、理化学研究所 のホームページをご覧ください。

 

発表雑誌

雑誌名

The EMBO Journal

論文タイトル

Single-molecule tracking of Nanog and Oct4 in living mouse embryonic stem cells uncovers a feedback mechanism of pluripotency maintenance

DOI番号

10.15252/embj.2022112305