DATE2022.04.19 #受賞・表彰
酒井明人講師が令和4年文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞
物理学専攻の酒井明人講師が令和4年度文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞されました。受賞業績は「強相関電子系およびトポロジカル磁性体を用いた量子物性研究」です。
良く知られているホール効果は電流に垂直方向に電圧が生じる現象で、そのトポロジカルな性質がこれまでの基礎研究により次々と明らかにされてきました。例えば整数量子ホール効果は、ベリー曲率(波数空間の仮想磁場)の積分値がチャーン数と呼ばれるトポロジカル数になることで生じると理解されています。一方、熱流に垂直方向に起電力が生じるネルンスト効果は理解が進んでおらず、実験・理論双方からのアプローチによる解明が必要な状況でした。
酒井博士はホイスラー合金Co₂MnGaが室温で巨大異常ネルンスト効果を示すことを発見し、多角的な実験と共同で行った数値計算との比較からトポロジカルな電子構造(ワイル点)がその起源として重要であることを明らかにしました。また、その後Fe₃X (X = Ga, Al) 系を見出し、安価な鉄系材料でも巨大異常ネルンスト効果を実現できることを共同研究を通じて示しました。
本研究成果は、トポロジカル電子物性の理解を進めただけでなく、革新的熱電変換技術としてセンサーや発電モジュール等で利用され、省エネ・超スマート社会において不可欠な技術へと発展することが期待されます。
この度の酒井博士のご受賞を心よりお祝い申し上げるとともに、今後益々のご活躍を祈念いたします。
令和4年度文部科学大臣表彰
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00989.html
(文責:物理学専攻 教授 中辻 知)