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受賞・表彰

DATE2021.12.15 #受賞・表彰

英国ヨーク大学博士研究員の谷内稜氏が第38回井上研究奨励賞を受賞

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谷内 稜氏


谷内稜氏は理学系研究科物理学専攻の大学院生時に、世界初となるニッケル-78の脱励起ガンマ線の観測に成功し、ニッケル-78が二重魔法性をもつ硬い原子核であることを明らかにしました。本研究成果をまとめた博士論文「78Niのインビームガンマ線核分光」が第38回井上研究奨励賞の受賞対象となりました。谷内氏が総勢71名の国際共同研究の主要なメンバーとして、実験遂行、データ解析などで活躍し、学術雑誌に第一著者で出版した論文は世界的な注目を浴びています。

ニッケル-78は、原子核物理学分野で特別な原子核です。その理由は、ニッケル-78が陽子数28、中性子数50の魔法数を二つもつ原子核だからです。安定原子核領域の研究では、二つの魔法数をもつ原子核は非常に硬いことが知られており、この二重魔法性が中性子過剰な原子核、ニッケル-78でも維持されているのかどうか、この未解決問題に対する答えを世界中の研究者が待ち望んでいました。

二重魔法性の指標は原子核の第一励起準位のエネルギーです。谷内氏らは、理化学研究所の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー」で得られる不安定核ビームを用いてニッケル-78の励起準位を効率よく生成し、脱励起ガンマ線を高効率のガンマ線検出器で観測しました。谷内氏は得られたデータを慎重に解析し、第一励起準位のエネルギーが周りの原子核に比べ非常に大きいことを明らかにし、二重魔法性の直接証拠を得ました。

現在谷内氏は英国ヨーク大学の研究環境に身を置き、ニッケル-78原子核の構造のさらなる探究に加えて、原子核内の核子間相関の問題に挑戦しています。

第38回井上研究奨励賞
http://www.inoue-zaidan.or.jp/b-01.html?eid=00049

(文責:物理学専攻 教授 櫻井博儀)