2021/04/30

坂野 仁名誉教授、瑞宝中綬章を受章

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坂野 仁名誉教授


本研究科名誉教授の坂野 仁教授が令和3年度春の褒章発令において瑞宝中綬章を受章されました。

坂野先生は一貫して匂いを感じる仕組みの研究を進めてこられました。坂野先生が理学系研究科生物化学専攻(当時)に着任されたころ、Richard AxelとLinda Buckにより嗅覚受容体ファミリーが同定されましたが(2004年ノーベル医学生理学賞)、匂いがどう脳内でコードされるかなど、さまざまな重要問題が未解決でした。坂野先生はこの問題に挑まれ、特に、約一千万本ある嗅神経細胞の軸索が、脳の先端部位である嗅球に形成される糸球地図の上の一つの投射先をどのように探し当てるのか、という「1糸球・1受容体」ルールの解明に取り組まれました。一連の研究の結果、嗅覚受容体遺伝子の選択、嗅覚受容体分子がその種類に応じて産生するcAMPの量、同じく受容体分子により決まる軸索誘導分子の転写量の制御を通して投射位置が決定されることを明らかにされました。坂野先生はさらに、糸球地図の匂い情報を脳がどのように読み取っているのか、という情動及び行動判断の問題に取り組まれました。特に、糸球地図の背側領野を欠損させた遺伝子改変マウスを作製し、このマウスが先天的な恐怖反応を全く示さないことから、本能的な回路と記憶に基づく学習回路が、情報受容の段階ですでに別個の受容体を介して独立に作動していることを示されました。

これらを含め、匂い情報処理の全貌を明らかにした長年の教育研究の功労が認められ、本章を受章されますことを、心よりお慶び申し上げます。

(文責:生物科学専攻 教授 飯野 雄一)



―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―

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