DATE2026.05.12 #受賞・表彰
横山茂之名誉教授が、春の叙勲において瑞宝中綬章を受章

横山 茂之 名誉教授
この度の横山茂之の瑞宝中綬章の叙勲に心よりお祝い申し上げます。
私は東京大学理学部生物化学科に進学し、宮澤研究室、そして大学院からは横山研究室で研究をスタートしました。
当時横山研究室は、恩師である宮澤先生の後を継いでtRNAおよびRasタンパク質を標的にしてNMRを用いた構造生物学研究を行っていました。
研究室に所属して間もない頃、先輩の村松氏がtRNAのアンチコドンに新規の転写後化学修飾を発見し、これを分子手術で元に戻すとアミノ酸特異性と翻訳特異性が同時に変わったことから、”tRNA identity”という概念を世界で初めて打ち出し、Natureのデビュー作を飾り、横山先生が村松氏と抱き合って喜んでいた風景をいまだに覚えています。
横山先生は、常にサイエンスに真摯で正直に向き合い、研究の進捗はスタッフ、学生に任せてはいるものの、論文執筆は常にパソコンの前で学生を横に座らせて作業を進め、なぜこう直すのかを一字一句説明しなければ気が済まない方で、論文の投稿は時間がかかったものの、現在1000報近くの論文を発表されています。
またいつも常人の20年先を見ている方で、2000年にヒトゲノムプロジェクトが完成するとすぐに、1万あると予測されたタンパク質のフォールディングを欧米日で3等分しNMRおよびX線結晶構造解析により立体構造を決定するタンパク質3000プロジェクトを2002年に開始し、580億円の研究費を獲得し、NMRパークを併設した理化学研究所横浜研究所を新設し、またSPring-8を始め日本全国に構造生物学を推進する体制を整えました。
しかし巨額の研究費を獲得したことで複数の研究者の妬みを買い、また構造決定した3000のタンパク質も共通のフォールドを持つものが多かったため、タンパク質3000プロジェクトは失敗であったとNature誌や新聞で叩かれました。
しかし、このStructural Genomicsにより得られた莫大な構造情報がなかったら、2024年にHassabis博士がノーベル化学賞に輝いたAlfaFoldはできていなかったであろうと思われ、実際にノーベル化学賞決定の際には、多くの海外研究者から横山先生に祝電が届いたと聞いています。
また、横山先生がタンパク質3000プロジェクトに託したもう一つの狙いは、日本全国にインフラを充実させることで、日本の構造生物学を大きく推進することであり、その流れは文部科学省のプロジェクトとして脈々と続いており、構造生物学において、日本の国際的プレゼンスを著しく高めることにつながっています。
横山先生は、とても人間的で正直な方で私に非常に目をかけてくださり、帝王学も伝授してくれました。そして横山先生が2010年に東大教授を辞め理研に移られた後、偶然にも私が東大の研究室を引き継ぐ形になりました。また、横山先生は、宮澤先生のサイエンスを実直に発展させ、タンパク質に非天然アミノ酸を組み込むことで新しい機能を持たせる研究も続け、現在複数のベンチャーで社会実装に向けた研究も進められています。
今回の受章で、私は、不名誉な風評が立っても、やはり見ている方はちゃんと見ているのだということを実感し、とても嬉しく思った次第です。
日本の国際的プレゼンスを大きく高められた横山先生、本当におめでとうございます。
(文責:生物科学専攻 教授 濡木 理)

