DATE2025.11.03 #受賞・表彰
日比谷紀之名誉教授が、令和7年秋の紫綬褒章を受章

日比谷 紀之 名誉教授
日比谷紀之名誉教授が令和7年秋の紫綬褒章を受章されました。日比谷名誉教授は本学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻を令和4年に退職され、現在は東京海洋大学客員教授および海洋研究開発機構アドバイザーとして活躍されています。
日比谷名誉教授は、海洋表層から深層への熱(浮力)輸送による深層水の湧昇を通じて、深層海洋循環、ひいては長期気候変動をも制御する「深海乱流」に注目し、理論と観測を融合した手法によりその実態を解明してこられました。
特に、潮流と海嶺・海山との相互作用により発生する内部潮汐波が、緯度依存性をもつパラメトリック共振を通じて高波数・近慣性流シアーを励起して乱流を引き起こす過程を数値実験により理論的に解明するとともに、これに伴う乱流強度の顕著な緯度依存性を深海乱流計による観測で実証し、世界初となる中・深層での乱流強度の全球マップを作成されました。また、潮汐と並んで深海乱流の有力なエネルギー源とされてきた大気擾乱の寄与を明確に否定する一方で、粗い海底凹凸地形上で強い潮流により励起される内部風下波の砕波に伴う背の高い乱流混合域が、海洋物理学で長く議論されてきた「乱流強度不足問題」解決の鍵となる可能性を提唱されました。さらに、以上の研究成果をもとに、海洋の中・深層および底層での乱流パラメタリゼーションを新たに開発し、マイクロスケールから海洋・気候モデルの高精度化への道を切り拓かれました。
これらの研究業績には、日本海洋学会岡田賞(1989年)、日本海洋学会賞(2008年)、科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞 (研究部門、2020年)、海洋立国推進功労者内閣総理大臣表彰(2021年)、国際測地学地球物理学連合(IUGG) 選出フェロー(2023年)、日本地球惑星科学連合(JpGU)フェロー(2025年)など多くの賞が授与されています。
このたびの日比谷名誉教授の受章を心よりお祝い申し上げますとともに、益々のご健勝とご活躍をお祈りいたします。
(文責:地球惑星科学専攻 教授 升本 順夫)

