DATE2025.10.16 #受賞・表彰
鍵裕之教授が「日本地球化学会学会賞、日本高圧力学会学会賞」ダブル受賞

鍵 裕之 教授
地殻化学実験施設の鍵裕之教授は、地球化学の発展に関し、学術上顕著な功績のあった者に授与される「日本地球化学会賞」(2025年9月)、そして高圧力の科学・技術の進歩に貢献し、内外から高い評価を受けた者に授与される「日本高圧力学会賞」を受賞されました(2025年10月)。
鍵教授の研究の出発点は、鉱物中の水素の存在様式を高圧下で解明することにあります。従来、水素は鉱物中に存在していてもその位置の決定が難しく、水素結合の圧力応答は未解明のままでしたが、高圧下での振動分光、中性子回折などの複合的手法を駆使し、構造パラメータの変化を圧力と関連づけて定量的に把握することに成功しました。こうした研究を可能にしたのが、鍵教授が日本の高圧科学コミュニティに導入・整備を主導した大型中性子回折装置「PLANET」の存在です。2000年代半ば、J-PARC計画の始動に伴い、日本国内での高圧中性子回折実験を実現すべく代表者として装置提案書を執筆・主導しました。この装置は、現在では世界の研究者によって利用される高圧物質科学の中核装置となっており、日本における地球内部物質科学の発展に決定的なインパクトを与えました。
PLANETを用いた研究の中でも特に注目すべき最近の成果は、鉄−水素系物質の体積膨張挙動の解明です。鍵教授らは、地球核における軽元素候補の一つである水素に着目し、水素の固溶によって生じる体積膨張係数を高温高圧下の中性子回折で定量化することに成功しました。純鉄に比べ、ニッケルやケイ素が共存することで鉄の水素誘起体積膨張係数が有意に増加することを示し、これまで広く用いられていた「純鉄モデル」に基づく核の水素含有量見積もりに対して、重大な修正を迫る成果となりました。また、鍵教授は、高圧科学を生命・惑星・環境分野に応用する先進的な研究も展開しています。
鍵教授の地球化学、高圧科学の両分野の業績に対するこの度のご受賞を心よりお祝い申し上げますとともに、今後の益々のご活躍を祈念いたします。
(文責:地殻化学実験施設 平田岳史 教授)

