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お知らせ

DATE2025.05.16 #お知らせ

超巨大ブラックホールが撃ち出す超高速のガスの弾丸

発表概要

あらゆる銀河の中心に存在する超巨大ブラックホールは、銀河と密接に関わり合いながら共に進化してきたとされています。この現象は「銀河とブラックホールの共進化」と呼ばれており、宇宙物理学における大きな謎の1つです。この謎を解く鍵と考えられているのが、ブラックホールから周りの領域にガスを強く吹き飛ばす「アウトフロー」もしくは「風」と呼ばれる現象です。この風が、周りのガスを温めたり押し退けたりすることで、銀河の星形成を抑止するのではないかと考えられているのです。

風がブラックホール自身や銀河の進化にどんな影響を与えるのかを理解するには、ガスの運動やエネルギーを精密に測定する必要があります。しかし、これまでの観測では精度が足りず、その詳細は長年の謎となっていました。

今回、東京大学大学院理学系研究科の萩野浩一助教を中心とするXRISM国際共同研究グループ(XRISM Collaboration、以下「研究グループ」という)が超巨大ブラックホールから吹く光速の20〜30%の速度の風を観測したところ、従来考えられていたような滑らかな構造の風ではなく、少なくとも5種類の異なる速度のガスからなる複雑な構造の風であることを発見しました。いわば、大量の“弾丸”が撃ち出されるように、ぶつぶつとした構造の風が吹いていると解釈できます。これは、XRISMの高い性能によって初めて発見できるものでした。さらに、この弾丸のような構造を考慮して推定すると、風は1年間に太陽の60〜300個分の莫大な量のガスを吹き飛ばしており、そのエネルギーは銀河規模で吹いている風*1より1000倍以上も大きいこともわかりました。

この結果は、「弾丸が間欠泉のようにたまにしか発射されない」もしくは「弾丸が銀河内ガスの隙間を縫って飛び出している」ということを示唆しており、従来の共進化の理論モデルの書き換えを迫るものです。今後のXRISMの観測結果に基づく研究によって、風が共進化に果たしてきた役割の理解が大きく進展すると期待されます。

本成果は英国の科学雑誌「Nature」に掲載されました。

図:超巨大ブラックホールPDS 456の想像図。ブラックホールから吹き飛ばされる風を白色で示している(クレジット:JAXA)

関連リンク

宇宙航空研究開発機構(JAXA)

発表雑誌

雑誌名
Nature
論文タイトル

Structured ionized winds shooting out from a quasar at relativistic speeds